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もし、『スター・ウォーズ』新作を見られず死んでしまったら―『最後のジェダイ』を見られなかったファンを想う

 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』公開まで、あと31日に迫った。いよいよ1ヵ月後には、待ちに待った『最後のジェダイ』が見られるのだ。もうすぐ、『フォースの覚醒』のラストシーンで、レイがルークにライトセーバーを差し出した後の物語を、我々は楽しむことが出来る。

 でも、もしもこの1ヵ月の間に、『最後のジェダイ』を見ることなく死んでしまったとしたら?

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死ぬ前に『フォースの覚醒』を見ることが出来た
ダニエル・フリートウッドさんの話

 ここで、時間を2年前に戻そう。2年前の2015年11月10日(火)、アメリカのテキサスに住んでいた『スター・ウォーズ』ファンのダニエル・フリートウッドさんが亡くなった。

 当時の世界中のファンと同様に、当時10年ぶりの新作『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の公開を待ち焦がれていたダニエル・フリートウッドさんは、末期ガンで余命わずかであると診断されていた。その余命宣告は、『フォースの覚醒』の公開が間に合わないと思われるものだった。

 妻のアシュレイさんがFacebookにそのことを投稿すると、多くの『スター・ウォーズ』ファンが、死ぬまでに『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を見たいというダニエル・フリートウッドさんの願いをSNSで拡散。

 「#ForceForDaniel」というハッシュタグにより広がったこの運動は、やがてマーク・ハミルさんやジョン・ボイエガさん、ピーター・メイフューさんといった『フォースの覚醒』のキャストにまで知れ渡り、彼の願いを応援した。

 そして11月5日に、監督のJ・J・エイブラムスさん、ウォルト・ディズニーのはからいによる特別試写が行われ、『スター・ウォーズ』の新作を見たいと願ったダニエル・フリートウッドさんは、未完成版ながらも『スター・ウォーズ/フォース覚醒』をついに見ることが出来たのだ。

ダニエルさんは『フォースの覚醒』の
ラストシーンに何を思ったのか

 劇場公開時、僕は『フォースの覚醒』のラストシーンを繰り返し見るうちに、『フォースの覚醒』を鑑賞してから5日後に亡くなることになるダニエルさんが、この映画を見終わって何を思ったのかと想いを馳せるようになった。

 それは、ついに『フォースの覚醒』を見ることが出来たことへの幸福と感謝の気持ちかも知れないし、いつまでもこの世界を見続けたいと願ってきた映画が、いよいよ終わってしまうことを自身の人生と重ね合わせたり、続編をすぐにでも見たいのに、それが叶わないだろうことへの寂しさ、無念さなのかも知れない。

 明らかに続きがあるというラストシーンを前に、それを見ることが出来ないと悟った人が、あるいは新たな三部作を見ることなくこの世を去ることになった人がどのような思いだったのか、僕には本当の意味ではまだわかっていないのだろう。

同年代だからこそ感じること

 2年前も、そして今も僕がダニエル・フリートウッドさんに思いを馳せるのは、まず彼が僕と近い年齢の同年代であることが大きい。

 きっと、これまでの自分の人生と同じように『スター・ウォーズ』が側にあって、素晴らしい映画体験や、グッズを集めたり、ファン仲間と一緒に楽しんだりするなどのたくさんの思い出とともに、生きてきたのだと思う。

 同年代だから、『エピソード1/ファントム・メナス』を多感な時期に迎え、プリクェル・トリロジーとともに大人になるなど、生まれ育ったのは遠く離れた場所だとしても、僕たちは、きっと同じような光景を見てきたのではないか。

 自分と何ら変わりなく、『スター・ウォーズ』の新作を楽しみにしてきたファンが、これからお楽しみがたくさんやってくる、まさにそれがはじまるという時期に、人生に幕を降ろさなければならないなんて。

 同じだけの時間を、同じ時代に生きてきたからこそ、その人生に思いを馳せずにはいられなくなるのだ。

『ファンボーイズ』が現実になったような出来事

 もうひとつ、彼が亡くなる前に待ち望んでいた『フォースの覚醒』を見たという出来事には、個人的にとても感慨深いものがある。

 それは、死ぬまでに『エピソード1/ファントム・メナス』を見たいと願ったファンのため、新作を見せてやるべくスカイウォーカーランチまで旅をする仲間たちを描いた映画『ファンボーイズ』を再現したかのような出来事だったからだ。

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 ダニエル・フリードウッドさんに起きたことは、フィクションである『ファンボーイズ』の筋書きを、スカイウォーカーランチまで旅をして不法侵入することなく、SNSで拡散させることでファンの応援を受けてルーカスフィルムを動かすという、2015年にふさわしい形でアップデートした上で実現したような出来事だった。

 『ファンボーイズ』ではキャリー・フィッシャーさんをはじめとした『スター・ウォーズ』キャストが出演していたが、ダニエルさんにもマーク・ハミルさんらがSNS上で応援した。キャストとファンが直接つながれてしまうSNSの時代を表しているようで、こちらも現代ならではの素晴らしさがある。

日本公開署名運動を主宰するほど
『ファンボーイズ』に関心を抱いたきっかけ

 僕は、アメリカで封切られた2009年当時に日本での公開予定がなかった『ファンボーイズ』の日本公開署名運動を主催しており、この映画には強い思い入れがある。

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 映画そのものの面白さに加えて、署名運動を始めてからの様々な思い出や、多くのファン仲間に応援され、支えてもらった経験、そしてついに日本公開が叶い、拍手と笑い声が満たす満員の劇場という夢に見た光景が実現したことは、今もこれからも心に残り続けることだろう。

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 2009年に当サイトで、「署名運動をやろうと思うけど、どうでしょうか?」と呼び掛けた記事に多くのコメントをもらい、強い後押しとなったことがこの『ファンボーイズ』の公開署名運動を開始したきっかけとなったが、そもそも『ファンボーイズ』に強い関心を抱いたポイントのひとつは、「死ぬまでに『エピソード1/ファントム・メナス』を見たいと願ったファン」というプロットの核だ。

 これはこれまでに誰にも言ったことがなく、ここではじめて明かすことだが、僕自身が『エピソード1/ファントム・メナス』を見られなかったファンと接したことが、『ファンボーイズ』を見たいと思った動機のひとつになっている。

『エピソード1』を見ることが出来なかった、あるファンの話

 1998年。

 僕は「スター・ウォーズ コレクションカードゲーム」というトレーディングカードゲームで遊んでいた。

スター・ウォーズ カードゲーム

 このトレーディングカードゲームは、映画のシーンはひと通りゲーム中で再現出来るというほどの原作への忠実度、高い戦略性というゲームそのもの魅力もさることながら、このカードゲームによって様々なマイナーなキャラクターに設定が作られるなど、特別篇から『エピソード1/ファントム・メナス』の時期にかけた90年代~2002年頃までの『スター・ウォーズ』エクスパンデッド・ユニバースの構築に大きな役割を果たしたゲームだった。

 このゲームが自分にとって、より『スター・ウォーズ』世界にディープに入り込むきっかけになったと思うし、後年にWikia Qwizards〈ウィキア・クイザード〉『スター・ウォーズ』世界大会で優勝するに至った礎になったと、今では思っている。

 1998年から1999年にかけては、輸入販売元のタカラが大会を開いていた。タカラ本社にほど近いテクノプラザかつしかという公共施設では定例トーナメントも行われており、僕も様々なカードゲーム大会に参加していた。

 こうしたイベントにて、トーナメントの中で対戦した方がいた(その方の名をここにKさんと呼んでおく)。

 Kさんは、当時毎月のように行われていたテクノプラザかつしかでのイベントでよくお見かけする方だった。その方との最初の対局は、「もっとこうすれば…」というようなプレイングが自分の中であったこともあり、印象に残っている。

 ある時、他の参加者との雑談の中で病院から抜け出して参加しに来たんだと話されており、脱走してまでカードゲームの大会に参加されたという気合にに驚くととともに、どうやら体調が悪いんだなと思っていた。

 1999年、水道橋のカードゲームショップにて行われていたイベントで、Kさんが先日亡くなったことを、Kさんの友人の方から聞いた。

 まさか、そこまで体調が悪かったとは。と、わりと最近まで会っていた方が亡くなったという知らせに、衝撃を受けた。

 そのことを聞いてその場にいた一堂がしんみりしている中、ある方が言った「『エピソード1』を見ずに死んじゃったんだなぁ…」という一言が、脳裏に残った。

 その後、Kさんの友人の方から形見分けということで、Kさんが持っていたカードを1枚、頂いた。そのカードは、その時の思いとともに今も保管している。

 ファンのグッズコレクションは、その人に何かあった時に価値がわからない人に処分されてしまうより、こうしてその価値がわかる人に譲られるのが理想なのだろう。

 Kさんの死がどのようにこの友人の方へと伝えられたのかはわからないが、もしもの時にすぐに連絡が取れるように交友関係を看取る人にもわかるようにしておくのは、趣味の道を進む者にとって重要だと思う。

 この夏、大いに盛り上った『エピソード1』を見ることなく人生を終えてしまうというのは、どういうことなのか。面識のある方が亡くなってしまったことへのショックとともに、眠れない夜にその言葉がリフレインし続けた。

 そんなこともあり、それから約10年後に『ファンボーイズ』の存在を知った時、そのプロットが面白く、絶対見たい!と思った時に、Kさんのことも脳裏によぎった。

 僕はKさんと特に親しかったわけではない。ただ、一時期同じ場所にいた『スター・ウォーズ』ファンとして、彼のことをこうして思い起こすことで供養になれば、と思う。

『スター・ウォーズ』の新作を見られることは
当たり前ではない

 『最後のジェダイ』の公開を前に、またこの作品を見ることが出来なかったダニエル・フリートウッドさんの死から2年を経った今、思うことがある。

 その映画が自分が期待した通りの傑作でも、自分が好きだった『スター・ウォーズ』の世界を台無しにするような駄作だったとしても、新しい予告編が発表されるたびに興奮し、指折り数えて待ち望んだ日々、そしてそんな映画をスクリーンで鑑賞出来るということは、かけがえのない貴重なものであるということだ。

 帝国軍のコスチューミング団体の501stリージョンの創設者、アルビン・ジョンソンさんの娘のケイティさんは、2005年に脳腫瘍で7才の時に幼くして亡くなった。

 もし今も生きていれば、19才になっている。もしそうなっていたら、病気の彼女を励ますために作られ、「クローン・ウォーズ」や『フォースの覚醒』に登場することになるR2-KTは存在していなかっただろうけど、父と一緒にトルーピングをやっていたりしたのだろうか。

 生き続けること、未来があるということって、そういうことなんだと思う。

 『スター・ウォーズ』の新作を映画館で見られることは、当たり前のことではない。

 折しも、新たな『スター・ウォーズ』三部作の製作に加え、『スター・ウォーズ』実写テレビドラマシリーズの予定も発表され、『スター・ウォーズ』の新たな映像作品は成功し続ける限り、これからもずっと続いていくことになる。

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 2年前にWiredに掲載された記事のように、「スター・ウォーズは永遠に完結しない」ため、「おそらくあなたはこのシリーズの完結を生きて観ることはできないだろう」、ということなのだ。

 つまり、ダニエル・フリートウッドさんに起きたことは他人事ではなく、いつか誰しも『スター・ウォーズ』の新作を見ることが出来なくなる時が来る。

 だから、これを書いている僕のこの一瞬も、これを読んでいるあなたのこの瞬間も、それだけで尊く、いとおしい。

 僕はそんなことを『スター・ウォーズ』を通して、この文章を最後まで読んでくれたあなたに、あなたにこそ伝えたかったのだ。

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