Disney+ (ディズニープラス)で配信中の「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」シーズン2 第8話「お前は誰だ?」レビュー/トリビアチェックポイントです。
この記事では、「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」シーズン2 第8話「お前は誰だ?」のストーリーやレビュー(感想・考察・批評)、トリビアの解説といった、このエピソードをより深く知るためのテキストを綴っています。
この記事はネタバレがございますので、「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」シーズン2 第8話「お前は誰だ?」の本編鑑賞後にご覧ください。
「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」シーズン2の他のチャプターのエピソード、シーズン1のエピソードガイドは、以下のカテゴリーからご参照ください。

ディズニープラス(Disney+)で独占配信の『スター・ウォーズ』実写テレビドラマシリーズ「キャシアン・アンドー」のストーリー、レビュー、隠れ要素(イースターエッグ)やオマージュなどのトリビアの解説といった、エピソードをより深く知るためのテキストをまとめたエピソードガイドです。

ディズニープラス(Disney+)で独占配信の『スター・ウォーズ』実写テレビドラマシリーズ「キャシアン・アンドー」のストーリー、レビュー、隠れ要素(イースターエッグ)やオマージュなどのトリビアの解説といった、エピソードをより深く知るためのテキストをまとめたエピソードガイドです。
「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」シーズン2 第8話「お前は誰だ?」レビュー
そのシナリオ通りに、ゴーマンに火は放たれた
「キャシアン・アンドー」シーズン2を通して、主要な舞台となってきたゴーマン。
「スター・ウォーズ 反乱者たち」シーズン3 第18話「極秘輸送」で、モン・モスマは「ゴーマンの虐殺」を非難して帝国から亡命したが、レジェンズとなった設定でターキンが起こした事件と類似した出来事はこの正史(カノン)では「ターキンの虐殺」とされてすでに起きていることが明かされていたので、「キャシアン・アンドー」シーズン2の中で「ゴーマンの虐殺」が起きることは推察できるものだった。その「ゴーマンの虐殺」がついに起きてしまうのが、この「キャシアン・アンドー」シーズン2 第8話「お前は誰だ?」だ。
「キャシアン・アンドー」シーズン1 第12話「リックス通り」でもフェリックスの暴動が描かれていたが、「ゴーマンの虐殺」では約350人ものエキストラを動員したシーンとなっており、その戦闘もより激しいものに。カメラもよく動き回って臨場感があるが、位置関係がつかみやすく見ずらさがない戦闘シーンだ。
『スター・ウォーズ』作品の中でも随一のヒリヒリとした緊張感が張りつめ、一個人ではかなわない大きなものによる力の行使や全体主義のおそろしさ、正義や執着の行く末がリアリティのある形で描かれる。
デドラ・ミーロの暗殺を図るキャシアン・アンドーだったが、パルモ広場では帝国軍によりバリケードが設置されはじめ、遂行が困難な状態となる。
これはカイドー大尉によるもので、作戦上はデドラ・ミーロの部下とはなるが現場での戦略は一任されており、デドラ・ミーロもコントロールできていない。帝国は、長年に渡って仕掛けてきたゴーマンでの計画を実行に移す時が来たのだ。
ゴーマンの民衆は、デモのため広場へと集まってくる。ゴーマン戦線の手には、1年前に帝国軍があえて帝国輸送キャリアーを襲撃させて、供与させたとも言うべき武器が握られている。
広場に集まったゴーマンの民衆が民族の誇りとともに、銀河は見ていることを訴え、歌を斉唱する中、カイドー大尉によって新兵たちが群衆の中でパトロールに向かわせられる。
一触即発の状況の中で、経験不足の新兵たちを向かわせて衝突を誘発させるためだ。
最後に火を付けるのは、帝国自身だ。狙撃手が新兵の一人を撃ち、先に攻撃されたことにして新兵たちに無実のゴーマンの民衆に反撃させる、卑劣な自作自演を行った。
かくしてゴーマンに火は放たれ、あらかじめ包囲されていたゴーマンの民衆は四方から銃撃を受け、またその手に持つ武器で事態をエスカレートさせられ、阿鼻叫喚の虐殺が起こってしまう。
すべてはISB(帝国保安局)のシナリオの通りで、ゴーマン戦線のリーダーであるカロ・ライランツが罠に気付いてデモを止めようとしても、もう止めることはできない状態となっていた。
利用された正義
カロ・ライランツは、ゴーマン戦線をスパイしていたシリル・カーンを見かけて激高して罵るが、陰謀の一端を担ったシリル・カーンもまた騙されていた。
掘削機の投下など、自身が知らないことを突きつけられ、苛立ちのあまりカロ・ライランツを投げ飛ばしたシリル・カーンは、デドラ・ミーロに本当の計画を言うように迫る。
皇帝からの命令により、ゴーマンの鉱物資源が必要であったという本当の目的を知ったシリル・カーン。デドラ・ミーロは何があってもやり遂げると、二人の暮らしや昇進といった個人の欲望のためだと示唆するが、シリル・カーンは彼女の元を立ち去る。
外部の反乱分子をゴーマンに誘い出すため、デドラ・ミーロとともにISB(帝国保安局)の企みに積極的に協力してきたシリル・カーンだったが、彼が持つ正義は利用されてしまった。
帝国軍とゴーマンの民衆が撃ち合い、逃げまどう混乱の中を茫然と眺めることしかできない。しかし、これは自分が招いてしまったものである。
キャシアン・アンドーが、再びデドラ・ミーロの暗殺を図ろうとしていたその時、シリル・カーンはようやく見つけてしまう。
あいつだ。
シリル・カーンはプリ=モー保安本部で、保安要員を殺害したキャシアン・アンドーを追うも失敗し、職を追われるも執念を見せ続けた。
外部の反乱分子をゴーマンに誘い出すという、シリル・カーンが考えていたゴーマンでの計画の目的は、追い続けたキャシアン・アンドーを念頭に置かれていただろう。
人生を狂わされ、すべての元凶だと言わんばかりに襲いかかるシリル・カーンによって、あと一歩だったキャシアン・アンドーによるデドラ・ミーロの暗殺を偶然にも防いだことは皮肉な展開だ。
因縁の相手に怒りと憎しみをぶつけるシリル・カーンと、突如として鬼気迫る知らない男から襲い掛かられ、必死で応戦するキャシアン・アンドーの戦いは凄惨だ。
それはリアルで痛そうな、命の取り合いであるというだけではなく、かたや長年の執念がこもった相手である中、もう一方はまったく知らない相手であるという、その憎しみがあまりにも一方通行であるということも指している。
キャシアン・アンドーが2人の保安要員を殺したことは罪であるし、腐敗した組織の中で犯人を見逃さず、追い続けたシリル・カーンは正しいことをしていた。
しかし、その正義、執念や執着は、上昇志向と結びつき、利用され、惨劇を招いてしまったのだ。
シリル・カーンは、過干渉であり彼を傷付ける存在でもあるものの、彼のことを思ってはいる母親がおり、陰謀の目的を隠して利用はしており、いびつな関係ではあったものの同じく彼のことを思ってはいるデドラ・ミーロがいて、彼なりの暮らしがあった。
そんな身近にもいそうで、間違ったことをしたとは思っていない人間でも、多くの人々が傷付く悲劇の一端を担ってしまうことがある。これはおそろしいことだ。
仇敵であるキャシアン・アンドーとついにあいまみえるシリル・カーン。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のキャラクターであるキャシアン・アンドーに対して、シリル・カーンは「キャシアン・アンドー」独自のキャラクターであるわけだが、2シーズンに渡ってそのドラマが描かれたシリル・カーンは「キャシアン・アンドー」の中で大きなウェイトを占めたキャラクターといえる。
しかし、いともあっけなくシリル・カーンの人生も幕を下ろすことになる。キャシアン・アンドーが危機に陥る中、騙されていたカロ・ライランツがシリル・カーンを銃殺することになった。
キャシアン・アンドーにとっては、最後までまさに「お前は誰だ?」という状態でわけもわからず強い殺意を向けられていたわけだ。名前を知られることもなく、自身の罪を意識させることもできず、何も伝わらなかったシリル・カーンの執念はあまりにもむなしい。
そんなシリル・カーンにも、ゴーマンのニュースを見て泣く母親がいることは悲劇であるとともに、ある種の救いにもなっているのではないだろうか。
「キャシアン・アンドー」シーズン2 第8話「お前は誰だ?」の序盤では、ゴーマンのシリル・カーンの部屋と、コルサントのイーディ・カーンの部屋にゴーマン土産のゴーレクティポッドが飾られており、この2つのシーンがつながれることで離れていてもお互いを思っていることが感じられる。
加害者もまた、犠牲者
デドラ・ミーロも、自身が言い出した計画ではあるが、もはや自身の手から離れて一人歩きしてしまった陰謀により何が起きたかを目の当たりにして恐怖する。
引き金を引かされたのは、デドラ・ミーロだ。
この、もはや一個人ではどうすることも出来ない力が持つおそろしさからは、『スター・ウォーズ』作品の中ではマイケル・リーヴスとスティーヴ・ペリーによるレジェンズの小説「スター・ウォーズ デス・スター」にて、スーパーレーザーのガンナーであり引き金を引いた張本人のデン・グラニートのエピソードを彷彿とさせられた。
デン・グラニートは銀河一の大砲が撃てると勇んでデス・スターのスーパーレーザーに就くのだが、ひとつの惑星とそこに住む者の生命や未来を一瞬で消し去る行為をその手で行ったことで、取り返しがつかない苦悩に陥った。
自身の上昇志向とそれに伴う職務の結果として、デドラ・ミーロが自身は何をしたのかを実感し、息苦しくなり、手の震えが抑えられなくなるなど、身体の方にそのストレスが出ているカットの連続は、全体主義の前では加害者もまた犠牲者と言えることが感じられる。
「キャシアン・アンドー」シーズン2 第3話「収穫」では、デドラ・ミーロは帝国の養育施設で育ったことが明かされた。彼女にとっては、この生き方しか選択肢がなかったのだ。細やかな描写の積み重ねが、後に起きる出来事に対するリアクションの理解につながってくる。
キャシアン・アンドーとK-2SOの出会い
また、おそろしさでいえば無機質で圧倒的な人間離れした力を持っているKXシリーズ・セキュリティ・ドロイドの登場シーンも際立っている。警告もなく、ブラスターも効かず、次々と人々を投げ飛ばして殺戮しながら進んでくる姿は、どう抗っても勝ち目がない存在が近付いてくるという絶望感がよく表れている。
その姿はKXシリーズ・セキュリティ・ドロイドの本質であり、再プログラムされたK-2SOも勢力を違えれば同じことだ。テクノロジーは、使う者によってその活かし方は変わってくる。
このゴーマンでキャシアン・アンドーとK-2SOの出会いが描かれ、ヤヴィン4のグレート・テンプルやデイヴィッツ・ドレイヴン将軍、Uウィングが登場した「キャシアン・アンドー」シーズン2 第7話「メッセンジャー」に続き、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の要素がまたひとつ加わったことになる。
キャシアン・アンドーとK-2SOの出会いは、コミック「スター・ウォーズ:キャシアン&K-2SO スペシャル」ですでに描かれていたものであり、スピンオフ作品を楽しんでいるファンの戸惑いもあろうかと思うが、この詳細は後述する。
ゴーマンの惨劇がもたらしたものはあまりにも大きかったことは、キャシアン・アンドーが静かに流す涙からもわかる。このゴーマンの虐殺により、反乱の火花はいよいよその数を増していくことになるだろう。
「スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー」シーズン2 第8話「お前は誰だ?」トリビアチェックポイント
「Rebellions are built on hope」
ホテルの従業員であるセラは、キャシアン・アンドーに「希望こそ反乱の礎(Rebellions are built on hope)」と言う。
この「Rebellions are built on hope」は、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』でキャシアン・アンドーがジェダにてジン・アーソに言っている(日本語字幕での訳は「反乱軍は希望を信じて戦う」)。
そしてジン・アーソは、デス・スターの設計図をスカリフから奪取することを同盟評議会で提案した際にもこのセリフを口にしている。
その源流はゴーマンのホテルのセラにあり、「メッセンジャー」であるキャシアン・アンドーによってジン・アーソに伝えられ、反乱軍と帝国軍の戦いにも影響を及ぼすことになったのだ。
製作総指揮のトニー・ギルロイの息子でガーディスを演じたサム・ギルロイが、このセリフを登場させるようトニー・ギルロイに懇願したという。
KXシリーズ・セキュリティ・ドロイド
カイドー大尉によって放たれたKXシリーズ・セキュリティ・ドロイドは、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』に登場したK-2SOと同型機だ。
このKXシリーズ・セキュリティ・ドロイドのうち一体は、サムが運転する帝国軍兵員輸送車によって轢き倒され機能停止となり、キャシアン・アンドーはこれを兵員輸送車に載せて運んで行く。
これがキャシアン・アンドーとK-2SOの出会いとなるわけだ。
2017年のコミック「スター・ウォーズ:キャシアン&K-2SO スペシャル」(日本語版はコミック「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」に収録)にて、キャシアン・アンドーとK-2SOの出会いはすでに描かれていたが、「キャシアン・アンドー」シーズン2 第8話「お前は誰だ?」はこのコミックと一致しないストーリーを描くことになった。
「スター・ウォーズ:キャシアン&K-2SO スペシャル」では、キャシアン・アンドーが反乱軍スパイのカータスとリズモアとともにウィカクーへと帝国のセキュリティ・プロトコル強奪へ向かった際に、警備していたK-2SOに遭遇。
危ういところで再プログラムに成功し、K-2SOを連れ帰ることでその内部にある帝国のセキュリティ・プロトコルのデータも合わせて入手することになった。
「キャシアン・アンドー」でのキャシアンとK-2SOとの出会いとは別の出来事となっているが、最初は襲撃されて機能停止させ、これを再プログラムするという点は共通している(K-2SOが帝国軍のKXシリーズ・セキュリティ・ドロイドである以上、それ以外の出会い方はそうないとは思うが)。
製作総指揮のトニー・ギルロイは制作の際にすでにキャシアン・アンドーとK-2SOが出会ったいきさつの設定があると知っていたことを、ジョシュ・ホロウィッツとの「Happy Sad Confused」にて語っている。
その上で、コミックにしばられず独自のストーリーを開発することになり、K-2SOが『エイリアン』や『プレデター』を彷彿とさせるホラー映画のように登場するエピソード案もあったものの予算の問題もあって、ゴーマンの虐殺に登場する形となったという。
コミック「スター・ウォーズ:キャシアン&K-2SO スペシャル」との整理について発表はないが、上記のように既存設定があった上で新たなストーリーを作ったこと、『スター・ウォーズ』の設定は基本的に映像作品の方が優先される傾向があることから、「キャシアン・アンドー」のストーリーが優先されるものと思って良いだろう。
「キャシアン・アンドー」シーズン2は、Disney+ (ディズニープラス)で配信中。

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