12月2日(金)~4日(日)まで千葉県・幕張メッセにて開催された「東京コミコン」に『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』でアシスタントプロダクションデザイナーを務めたアラン・ロデリック=ジョーンズさんが来場されました。
12月3日(土)には、「東京コミコン」のメインステージにてFandom<ファンダム>主催のアラン・ロデリック=ジョーンズさんのトークセッションが開催。会場の座席は、多くのファンで埋め尽くされ盛況となりました。
トークセッションでは私も登壇し、質問をさせて頂きましたが『スター・ウォーズ』1作目の制作スタッフによる貴重なお話をまだまだ聞きたい!というわけで、トークセッション後、私はアラン・ロデリック=ジョーンズさんに独占インタビューをさせて頂きました!
今回のインタビューは、アラン・ロデリック=ジョーンズさんを招聘したFandom<ファンダム>さんのご協力の元で行われたものでして「Fan’s Voice」にも、アラン・ロデリック=ジョーンズさんのインタビュー記事を掲載させて頂いております。
「Fan’s Voice」の記事は、この「スター・ウォーズ ウェブログ」掲載のインタビューとは異なる内容で、両サイトでそれぞれオリジナルな記事となっておりますので、ぜひ両方ご覧頂けますと幸いです。いずれもここでしか読めません!
エルストリースタジオでのカンティーナの撮影
―― エルストリースタジオでのカンティーナのシーン撮影には立ち会いましたか。
アラン・ロデリック=ジョーンズ いたことはいたんだが、次のシーンをすぐに手掛けてなければならないから、ほとんどメインステージの方には行くことはなかったよ。セットの裏の方で、とにかく次のシーンの準備をしていたから、多くて30分~1時間くらいしかメインキャストと時間を過ごせなかった。
『ニコライとアレクサンドラ』(1971年)という映画で働いた時は、セット自体の美術部門の代表として仕事をしていた。
フランクリン・J・シャフナー監督は、毎日セットのプランが出来上がっていて、例えばすべてのセットが出来ている状態でA・B・Cという壁があったとして、このカットはAとBはいらないというようなことをクルーに指示し、これを撤去させたりしていたんだ。
そして、『アラビアのロレンス』(1962年)にも携わった撮影監督のフレディ・ヤングが照明をセットに当てて、俳優がやって来たらすでにリハーサル済みで、すぐに始められるようにしてあった。
どのカットを撮るかについては、フランクリン監督がカメラに今日中に撮影するリストを貼り付けてあり、そのセットの中の何が動かされたのかを全部チェックするのが自分の仕事だった。
そして撮影中は、監督の後ろに立ってちょっと何かが動いていたという時に私がカットを掛けていた。監督は「それは絶対に重要なんだろうな」というような素振りをしていたよ(笑)
『スター・ウォーズ』では、そうした役割ではなかったんだ。
撮影後、カンティーナのセットはどうなった?
―― カンティーナのセットは、撮影終了後に廃棄されてしまったのでしょうか。バーカウンター奥のパーツは次回作の『帝国の逆襲』でIG−88の頭部に流用されているので、保管された資材もあったのでしょうか。
アラン・ロデリック=ジョーンズ すべてのセットやモデルは倉庫に保管されたよ。
―― ちなみに、IG−88の頭部に流用されていたことは知っていましたか?
アラン・ロデリック=ジョーンズ それは知らなかった。
カンティーナで使われていたすべてのプロップやモデルに対して25セントだけでももらっておけば良かったよ(笑)
(ゲーム会社の)ヴィヴェンディ・ユニバーサルゲームズと契約した時は、87点のスケッチをゲーム版の「指輪物語」のために描いた。普通だったらスケッチ自体は会社の権利になるが、契約書の中で自分の持ち物であることをちゃんと書いたおかげで、複製のみを渡す形で済んだんだ。
―― 「指輪物語」のゲームの美術のお仕事は、映画『ロード・オブ・ザ・リング』(2001年)とは関係があったのでしょうか?
アラン・ロデリック=ジョーンズ 原作小説のゲーム化だ。映画とは関係ない。スケッチが全部終わるまで、映画を見てはいけなかった。映画を見てしまうとイメージがついてしまうからだ。そのスケッチは私のWEBサイトで見られるよ。
J・R・R・トールキンが書いた原作の「指輪物語」は、本当に描写力がものすごく細かく書かれており、さらにトールキンのヒストリア(歴史係)からもすべての場所などの細かい描写が描かれた資料を送ってもらって、それを元に描いたわけなんだが、その後に映画を見たら、ものすごく自分が描いたものと似ていてびっくりした。
このほか、私が携わった「ハルク2」もコミックを原作にしたゲームだった。同じくゲームの「ヴァン・ヘルシング」では制作時に3点しか写真を送ってくれなかったので、全部自分で1から作ったよ。
ここが気になる!『スター・ウォーズ』デザイン
―― カンティーナや王座の間を設計するにあたり、実在する場所をデザインの参考にされたことなどはあったのでしょうか。
アラン・ロデリック=ジョーンズ いや、ない。『スター・ウォーズ』に関しては実在する場所は参考にしていない。ゲームの「指輪物語」の時は、自分のオフィスで本に囲まれている状態だったので様々な参考材料があり、イタリア・ローマのスペイン階段の建築を少しだけ参考にしたりした。また、インドのお城とかそういう部分だけ参考にしたんだ。
『スター・ウォーズ』については、ラルフ・マクウォーリーのスケッチとジョン・バリーのアイデアのみに基づいて作った。
―― デス・スターの通路のデザインもされたということですが、帝国軍の施設の特徴である、壁面にある縦長のライトのデザインは誰のアイデアだったのでしょうか。あれがあれば、一目で帝国軍の施設であることがわかるアイコニックなデザインかと思います。
アラン・ロデリック=ジョーンズ ドラフトを描いたのはラルフ・マクウォーリーで、彼が一番最初のスケッチを描き、ジョン・バリーがこれを実現させた。
ラルフ・マクウォーリーがコスチュームのスケッチまでやっていたことを全然知らなかったので、後で知って驚いたよ。
―― ルークが住んでいたラーズ家の水分農場のガレージにあったT-16スカイホッパーについてお聞かせください。
アラン・ロデリック=ジョーンズ ジョン・ダイクストラがデザインした。はっきりとは断言出来ないが、おそらくラルフ・マクウォーリーのスケッチを元にしてそのアイデアに辿り着いたのかも知れない。
フルサイズで作るためのデザインは全てされていたのだが、プロップしか使われなかった。エンジンに見えるようなパーツを、ジャンクの中から探すのが私の仕事だった。スカイホッパーの赤いワシのようなロゴなども描いたよ。
「伝説」を作ったスタッフの声を聞いて
エルストリースタジオにて、『スター・ウォーズ』のカンティーナのセットを制作したアラン・ロデリック=ジョーンズさん。あのおなじみのシーンの制作に立ち会った方から、貴重なお話を伺うことが出来るとは…
『スター・ウォーズ』のデザインについての細部のお話だけではなく、自身が携わった『スター・ウォーズ』以外の映画やゲームでのお話まで伺うことが出来、アラン・ロデリック=ジョーンズさんの経歴の一部をぎゅっと凝縮したようなインタビューとなったかと思います。
また『スター・ウォーズ』のデザインにおいて、ラルフ・マクウォーリーのコンセプトアートが元になっていることはもちろんなのですが、カンティーナや王座の間をセットとして具現化する過程では、少し参考にした実際の酒場や神殿などがあったのでは…と思って質問したところ、実在の場所は一切参考にしていないとのことでした。『スター・ウォーズ』の異世界感は、こうした点からも生み出されているのかも知れません。
ちなみにインタビュー時には、アラン・ロデリック=ジョーンズさんが内装を手掛けられたということでミレニアム・ファルコンのタオルと、ライトセーバーチョップスティック(ルーク・スカイウォーカー)を私からアランさんにプレゼントしたところ、喜んで頂けました!
このほかに伺ったアラン・ロデリック=ジョーンズさんのインタビューは、「Fan’s Voice」に掲載されておりますので、こちらも合わせてご覧頂ければ幸いです。
記事作成ご協力:Wikia Japan株式会社
2005年より「スター・ウォーズ ウェブログ」を運営。「『スター・ウォーズ』究極のカルトクイズ Wikia Qwizards<ウィキア・クイザード>」世界大会優勝者。ディズニープラス公式アプリ「Disney DX」のオリジナル動画や記事など、様々な出演/執筆も行っています。2010年、『ファンボーイズ』日本公開を目指す会を主宰しました。
コメント
ちょうど、映画『エルストリー1976』を観た直後だったので興味深く読みました。そう簡単にコンベンション等に参加できる状況にないので、こういう記事は嬉しいですね!
フランクリン・J・シャフナー監督の話は「自分もそう有らねば。」と身につまされました。笑
最近出版された「スター・ウォーズ 制作現場日誌」が、この記事で、よりリアルに感じられました。
>墨石亜乱さん
ご覧頂きまして、ありがとうございます!
『エルストリー1976』や、「スター・ウォーズ 制作現場日誌」など
最近『スター・ウォーズ』の舞台裏を描写した作品が多いですが、
こちらの記事もご参考になりましたら幸いです!