日本国内の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の最終興行成績は、興行収入が115億3000万円、観客動員数は736万9000人という結果でした。
まず、115億円というこの興行収入は年間ナンバーワンクラスの大ヒット!
昨年2015年の邦画・洋画合わせての年間興行収入ランキング1位の『ジュラシック・ワールド』の95億円にさらに20億円を上乗せした額ということからも、この数字のすごさがわかるかと思います。
宮崎駿が『風立ちぬ』で引退して以来、邦画も洋画(『アナと雪の女王』を除く)も100億円を出せなくなった時代に、115億円という成績を挙げたのは立派。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は2015年末公開の映画なので、2016年年間興行収入ランキングに入ることになりますが、115億円というこの記録を超える映画が出て来ない限り、ナンバー1ということになります。
ただ、この日刊ゲンダイの記事にあるように、ディズニー傘下で作られた『スター・ウォーズ』というフランチャイズ映画の新シリーズ第一作の成績として考えると、手放しで喜べない課題の残る数字でもあります。
それでは、日本での『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の興行収入について、様々な角度から検証してみましょう。
目次
- 1 実写洋画の100億円突破は6年振り
- 2 『スター・ウォーズ』 プリクエル・トリロジーの興行収入との比較
- 3 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』
国内興行ランキング順位の推移
- 3.1 1週目(2015年12月19日~2015年12月20日)
- 3.2 2週目(2015年12月26日~2015年12月27日)
- 3.3 3週目(2016年1月2日~2016年1月3日)
- 3.4 4週目(2016年1月9日~2016年1月10日
- 3.5 5週目(2016年1月16日~2016年1月17日)
- 3.6 6週目(2016年1月23日~2016年1月24日)
- 3.7 7週目(2016年1月30日~2016年1月31日)
- 3.8 8週目(2016年2月6日~2016年2月7日)
- 3.9 9週目(2016年2月13日~2016年2月14日)
- 3.10 10週目(2016年2月13日~2016年2月14日)
- 3.11 11週目(2016年2月27日~2016年2月28日)
- 3.12 12週目(2016年3月5日~2016年3月6日)
実写洋画の100億円突破は6年振り
まず実写洋画作品が興行収入100億円を突破したのは、2010年の『アリス・イン・ワンダーランド』以来6年振り。この6年間に公開された、メガヒットシリーズの最終作『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』をはじめとしたあらゆる実写洋画作品は、100億円を突破することが出来ませんでした。
『フォースの覚醒』が、この100億円の壁を突破したのは『スター・ウォーズ』という作品そのものの力と10年振りの新作という話題性、そして2015年の1年間をかけて世間に浸透させ、年末にはどこを見ても『スター・ウォーズ』!という大攻勢を仕掛けたプロモーションによるものでしょう。
ただ、実写だけではなくアニメを含めると、2014年の『アナと雪の女王』以来ということになるので、興行収入100億円を突破した洋画はそこまで久しぶりではありません。興行収入254億円を記録した『アナと雪の女王』はもはや別格ですが…
『アリス・イン・ワンダーランド』に届かなかった
『フォースの覚醒』の興行収入
一方で、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は『アリス・イン・ワンダーランド』自身が持つ興行収入118億円には僅差で届かず、という結果にもなっています。
『アリス・イン・ワンダーランド』(118億円)>『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(115億円)と改めて不等式にすると、なんだかなぁ…
『アリス・イン・ワンダーランド』公開当時の2010年は、前年末の『アバター』からはじまる3D映画ブームが起こり、ものめずらしさもあって3D作品の注目度が高かった時期。『アリス~』はその時流の恩恵を受けたということも大きな要因ではあります。
『スター・ウォーズ』
プリクエル・トリロジーの興行収入との比較
では、比較的公開年が最近であり、映画興行を取り巻く環境が現在に近い『スター・ウォーズ』プリクエル・トリロジーと比較した場合はどうでしょうか。
●スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス(1999年):132.6億円
●スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃(2002年):93.5億円
●スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐(2005年):91.7億円
『フォースの覚醒』と同じく100億円を突破しているのは『エピソード1/ファントム・メナス』のみですが、『フォースの覚醒』の興行収入115億円は『エピソード1』に届きませんでした。
『エピソード2/クローンの攻撃』、そしてこの時点でシリーズ完結編と言われていた『エピソード3/シスの復讐』も100億円に届いていません。シリーズを重ねるごとに、右肩下がりなっています。
これは『スター・ウォーズ』に限らず、シリーズ映画の興行収入は本数を重ねると落ちていく傾向にあります。
続編映画は基本的に前作を鑑賞していることが前提なので、前作未見者、また前作を見たものの続編は見ない観客という脱落者がどうしても出てしまうためで、シリーズ映画の特性と言えます。
なぜ『フォースの覚醒』は
『エピソード1』の興行収入を超えられなかったか
その点、『フォースの覚醒』は新しい三部作の第一作だったので、まだシリーズ初見者にも見やすい作品であり、同じく三部作の第一作である『エピソード1/ファントム・メナス』と似たポジションの作品でした。
しかし、その『エピソード1/ファントム・メナス』が持つ興行収入132.6億円を『フォースの覚醒』は超えることが出来ませんでした。
1999年と2015年の間の16年間に起きた映画を取り巻く市場環境の変化や、また『エピソード3/シスの復讐』と『フォースの覚醒』の間の10年間は実写映画の公開はなかったものの、「クローン・ウォーズ」など何らかの形で『スター・ウォーズ』が動き続けていたことに比べて、『ジェダイの帰還』と『エピソード1/ファントム・メナス』の間の16年間の方が冬の時期の年数も長く、文字通り休止期間だった反動でより熱狂的なフィーバーが巻き起こっていた、ということなどが要因なのかも知れません。
ただ、『フォースの覚醒』がもう少し伸びなかったものかな…という違和感を感じてしまうのは、右も左も『スター・ウォーズ』に染め上げたプロモーション規模の体感と、実際の興行収入との間にギャップがあるからだと思います。
ディズニーの全方位プロモーションでも、
興収130億円に届かなかった
『エピソード1/ファントム・メナス』と『フォースの覚醒』の違いのひとつは、『フォースの覚醒』はディズニーブランドの超大作映画であるということ。
ディズニー作品は、数々のライセンシー企業との取り組みによる膨大な商品化展開と企業タイアップによるプロモーションに加えて、グッズを自前で販売出来るディズニーストア、テーマパーク、TVチャンネルなど、自前で全方位のタッチポイントを持っているという強みがあります。
これらのディズニーならではのタッチポイントをフル動員したにも関わらず、『フォースの覚醒』は16年前に20世紀フォックスが配給した『エピソード1/ファントム・メナス』の興行収入を上回ることが出来なかったのです。
これが、違和感の正体なのではないでしょうか。ディズニーの全方位攻撃をもってしても難しかったのかと…
「エピソード8」、「エピソード9」は
「115億円の壁」を超えられるか
いずれにしても、115億円という『フォースの覚醒』の興行収入は今後の日本での『スター・ウォーズ』映画シリーズの興行収入の指標になります。
これからの「エピソード8」、「エピソード9」の興行収入が、『スター・ウォーズ』プリクエル・トリロジーの興行収入と相似すると想定した場合、『フォースの覚醒』の115億円を頂点に右肩下がりとなってしまいます。
もちろん、『スター・ウォーズ』プリクエル・トリロジーと同じ曲線を描くとは限らず、『フォースの覚醒』公開後も継続的に新たなファンを獲得し続けることで、その続編でさらに興行収入を伸ばすことも考えられます。
例えば、シリーズ映画は右肩下がりになるというセオリーをくつがえした作品として、「怪盗グルー」シリーズがあります。
●怪盗グルーの月泥棒 3D(2010年):12億円
●怪盗グルーのミニオン危機一発(2013年):25億円
●ミニオンズ(2015年):52.1億円
※出典:一般社団法人 日本映画製作者連盟
なんと、続編を公開する度に興行収入が前作の2倍に!3D映画のアミューズメント感を全面に出した1作目の後、2作目以降でミニオンのキャラクターを女性・ファミリー層に浸透させたことが成功につながったのだと思います。
今後公開される『スター・ウォーズ』映画は、『フォースの覚醒』の興行収入「115億円の壁」を超えるかどうかが、ひとつの注目ポイントとなります。
女性層・キッズ層への訴求が難しそうな
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』
直近の2016年末に公開される『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は正直なところ、興行に不安が残ります。
現状ではハードな世界観の作品の印象となっており、R2−D2や『フォースの覚醒』でのBB−8のようなマスコットキャラクター的な存在がおらず、『フォースの覚醒』と比べて一般の女性層とキッズ層への訴求が難しそうだと感じます。
また、「スピンオフ」という外伝的なイメージから、「本筋には関係ないから見なくても大丈夫」という印象も受けかねないこともナンバリングタイトルに比べて若干不利な要素。
ただ、そこはウォルト・ディズニーのこと、あの手この手での宣伝攻勢は仕掛けてくるはずですし、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は最初の『スター・ウォーズ』スピンオフ映画であり、これから多数の作品がリリースされる『スター・ウォーズ』映画シリーズの今後を占う重要な1作なので、個人的にも盛り上げるべきだと思っています。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』
国内興行ランキング順位の推移
最後に、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の日本での興行ランキングの推移を追っていきます。
これまでの『スター・ウォーズ』映画は、毎週の興行ランキングを当サイトで記録していたので、本当は『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の興行もリアルタイムで記録したかったのですが、色々と間に合わず…
2015年12月18日(金)から、トップ10圏外となるまでの毎週の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』の興行ランキングでの推移を振り返ります。
1週目(2015年12月19日~2015年12月20日)
順位:2位(初登場)
12月18日(金)より全国368館、958スクリーンで公開。土日2日間で動員80万0258人、興収12億4502万3900円の成績。
初登場1位は『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』に譲るが、興行収入では『妖怪ウォッチ』を上回り、3日間では動員104万4330人、興収16億1934万円を記録。
2週目(2015年12月26日~2015年12月27日)
順位:2位(→前週と変わらず)
3週目(2016年1月2日~2016年1月3日)
順位:1位(↑前週より1ランクアップ)
土日2日間で動員52万1980人、興収8億2665万5600円を記録し、首位を奪取。
4週目(2016年1月9日~2016年1月10日
順位:1位(→前週と変わらず)
2週連続1位を獲得。週末2日間で動員39万1207人、興収6億1964万4800円を記録。11日までに興収82億円を突破。
5週目(2016年1月16日~2016年1月17日)
順位:1位(→前週と変わらず)
3週連続首位にランクイン。週末2日間で動員23万6219人、興収3億8726万5900円をあげ、17日までで累計興収90億円を突破。
6週目(2016年1月23日~2016年1月24日)
順位:2位(↓前週より1ランクダウン)
週末2日間の成績が動員15万9769人、興収2億6327万8600円を記録するも、首位を『信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)』に明け渡して2位に後退。
累計動員は616万人、興収は96億円を突破。
7週目(2016年1月30日~2016年1月31日)
順位:3位(↓前週より1ランクダウン)
首位の『信長協奏曲(ノブナガコンツェルト)』に加え、2位に初登場の『さらば あぶない刑事』が入り3位に後退。
しかし前週動員比96%と落ちが少なく、累計興収100億円を突破。
8週目(2016年2月6日~2016年2月7日)
順位:4位(↓前週より1ランクダウン)
初登場の『オデッセイ』が首位を獲得し、上位2作品の並びを変えないまま4位に後退。
9週目(2016年2月13日~2016年2月14日)
順位:4位(→前週と変わらず)
上位4作品に変動がなく、そのまま4位をキープ。
10週目(2016年2月13日~2016年2月14日)
順位:5位(↓前週より1ランクダウン)
新作で『X-ミッション』が3位にランクインし、5位に後退。動員700万人、興収110億円を突破。
11週目(2016年2月27日~2016年2月28日)
順位:7位(↓前週より2ランクダウン)
12週目(2016年3月5日~2016年3月6日)
順位:6位(↑前週より1ランクアップ)
3月2日、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が3月25日(金)にすべての劇場、スクリーンにて上映終了することが発表。
その影響か、公開12週目にして前週より1ランクアップする。しかし、次週の3月12日~3月13日のランキングでは、新作映画5作品がトップ10入りし『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』はランク外となり、これ以降はトップ10に返り咲くことはないまま3月25日(金)の上映終了日を迎えた。
2005年より「スター・ウォーズ ウェブログ」を運営。「『スター・ウォーズ』究極のカルトクイズ Wikia Qwizards<ウィキア・クイザード>」世界大会優勝者。ディズニープラス公式アプリ「Disney DX」のオリジナル動画や記事など、様々な出演/執筆も行っています。2010年、『ファンボーイズ』日本公開を目指す会を主宰しました。