ディズニー公式動画配信サービス「Disney+ (ディズニープラス)」で配信の「スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ ファイナル・シーズン」(全12話)をネタバレなしでレビューします。
2008年に映画版の公開とテレビシリーズの放映が開始され、ルーカスフィルムがディズニー傘下となった後の2014年に放送の「フィフス・シーズン」にてシリーズは終了。
その後、シリーズ終了決定時点で完成していたシーズン6にあたる未公開エピソード「ザ・ロスト・ミッション」の公開もあるなど、紆余曲折を辿ってきましたが、「クローン・ウォーズ」の継続を希望するファンが「#SaveTheCloneWars(クローン・ウォーズを救え)」のハッシュタグでSNSに投稿するなど、構想されていた完結を待ち望まれていたシリーズでした。
そんなシリーズの完結編「クローン・ウォーズ ファイナル・シーズン」全12エピソードを通してレビューしていますが、ストーリーの核心などには触れておりません。
「クローン・ウォーズ ファイナル・シーズン」をすでにご覧になった方も、作品の印象が知りたい未見の方も、いずれもお読み頂ける内容にしております。ただ「ファイナル・シーズン」という特性上、これまで発表されたシリーズで語られている内容や、エピソードのあらすじは触れておりますので、ご了承ください。
時を経て描かれる、クローン戦争の終わり
「始まるのじゃ、クローン戦争が」
今から18年前の2002年に公開された『エピソード2/クローンの攻撃』で、ヨーダが開戦を告げたクローン戦争。
クローン戦争は、1977年公開の『スター・ウォーズ』にてオビ=ワン・ケノービがかつて将軍としてルークの父、アナキン・スカイウォーカーと共に参戦していたことがセリフのみで触れられ、劇中以前の時代に銀河で起きた大きな出来事であることが示唆されているのみで、当時はその世界の歴史と奥行きを感じさせてくれるワードだった。
そんなクローン戦争の全貌を明かしたのが、2008年よりスタートした「スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ」だ。
それから12年、シリーズの中断など紆余曲折があったものの、43年前に謎めいた言葉として登場した「クローン戦争」はついにこの「ファイナル・シーズン」で終結した。実に長い戦いだった。
2014年のシーズン6「ザ・ロストミッション」からも6年が経つが、シーズン7となる「ファイナル・シーズン」はそのブランクから生じかねない違和感を少しも感じさせずにいながら、映像表現は時を経たことで細かい部分でディテールアップしているように感じる。
12年経てば、当時「クローン・ウォーズ」を見ていた子どもも青年になる。「クローン・ウォーズ」に幼い日の自分を思い出す世代も、放映当時のなつかしさを感じつつも、決して古さを感じさせないビジュアルとなっているはずだ。
これまでスカイウォーカー・サーガはもちろん、「クローン・ウォーズ」121話(「ファイナル・シーズン」を除く)+劇場版、「スター・ウォーズ 反乱者たち」、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』といった映像作品、さらにコミックなどのスピンオフ作品を楽しんできた『スター・ウォーズ』のコアなファンならば、2014年以降に発表された作品も含めて、様々なシリーズがつながって面白さを重ねられていくことに興奮するだろう!
これだけの作品群を楽しみ、「クローン・ウォーズ」を応援してきたファンにとっては「ファイナル・シーズン」はすばらしいプレゼントだ。
そもそも本作は「ファイナル・シーズン」なので、これまでの「クローン・ウォーズ」を見ていることが前提となるが、長大な「クローン・ウォーズ」全話を見て覚えていなければ楽しめないというわけではなく、話のポイントをつかんでおけば問題ないと思う。また、幅広い作品群もこれらのシリーズを見ているに越したことはないが、イースターエッグ的な要素も楽しみたいのであれば、といったところだ。
「不良分隊」「エコーの呼ぶ声」「キーラダックの翼に乗って」「やり残した仕事」
全12話のファイナル・シーズンは、大きく分けて4話ずつの3つのストーリーからなっている。
第1話~第4話の「不良分隊」、「エコーの呼ぶ声」、「キーラダックの翼に乗って」、「やり残した仕事」は、不良分隊(バット・バッチ)と呼ばれるエリート・クローン・コマンドー部隊「クローン・フォース99」を中心に据えて、その活躍を描く。
「クローン・フォース99」というネーミングは、シーズン3 1話「トルーパーへの道」、2話「誇り高き兵士たち」で登場し、遺伝子異常がありながらも誇りと勇気を持ったクローン・トルーパー99への敬意を込めて名付けられたことが示唆されている。
突然変異した遺伝子を持って生まれ、通常のクローン・トルーパーよりも強い個性を持った兵員が集まった不良分隊が、「特攻野郎Aチーム」や『ミッション・インポッシブル』シリーズ(オリジナルのTVドラマ「スパイ大作戦」も同様だが)のように、それぞれ特化されたスキルを活かしてチームワークで戦場を駆け巡り、困難を打開していく。
怪力を持つ好戦的なマッチョ、楊枝をくわえたクールなスナイパー、テクノロジーならなんでもおまかせなメカニックに、個性的なメンバーを束ねるパワーのあるリーダーと、それぞれの専門性が際立つキャラクターの集まりである、不良分隊の紹介編のようなエピソード群がこの4作だ。
ジョージ・ルーカスは、不良分隊について『特攻大作戦』のようなクローン・トルーパーたちというビジョンを持っていたようで、彼らの痛快な戦いぶりはもっと見てみたいと思わせてくれる。
この不良分隊の面々と、シーズン3 第18話~第20話の「鉄壁の要塞」、「決死の脱出」、「勝利の代償」で描かれた、シタデルからの脱出劇にて戦死したと思われていたクローン・トルーパーのエコーが生存している可能性を求めるキャプテン・レックス、そしてアナキン・スカイウォーカーの戦いがこのストーリーの主軸だ。
戦死したと思われたクローン・トルーパーの兄弟のために帰ってくるという展開や、アナキンとキャプテン・レックスの掛け合いと活躍はまさに「クローン・ウォーズ」が帰ってきたと思わせてくれる、いかにも「クローン・ウォーズ」らしい4作と言えるだろう。
2021年には、この不良分隊が主役の新作アニメーション「スター・ウォーズ ザ・バッド・バッチ」のDisney+ (ディズニープラス)での配信が発表されており、彼らが帝国の時代にどのような活躍を見せてくれるのか、確かに楽しみなところだ。この新作シリーズに備えて、まずはこの紹介編を見ておくといいだろう。

「夢見るトレース」「危険な取引」「取引の果て」「再結束」
第5話~第8話の「夢見るトレース」、「危険な取引」、「取引の果て」、「再結束」は、ジェダイ・オーダーを辞めたアソーカ・タノがその後、どのように過ごしていたかが語られる。
ジェダイではなくなったアソーカは、コルサントのアンダーワールドのレベル1313で修理店を営むトレースと、その姉で怪しいビジネスに手を染めるラファのマルテス姉妹と出会う(レベル1313は、リリースされなかったゲーム「Star Wars 1313」の舞台と同じ)。

自分の船でパイロットとして宇宙に飛び立つという夢を持ち、やさしい心を持つトレースと友人になるアソーカは、姉のラファにより持ち込まれたスパイス輸送の仕事に巻き込まれ、あのパイク・シンジゲートとのトラブルの渦中に足を踏み入れることに…
基本的には銀河共和国と独立星系連合との戦いを描く「クローン・ウォーズ」だが、ホンドー・オナカーやキャド・ベインといった海賊や賞金稼ぎなど、ならず者たちの第三勢力のエピソードも多く、彼らの暗躍も見どころのひとつだった。
この4作では、そんな「クローン・ウォーズ」の一面である危険なアンダーワールドの中で、ジェダイ・オーダーに失望したものの、ジェダイというアイデンティティを失ってしまったアソーカが、自分を見つめ、探して取り戻していく様子を、ジェダイに対して良い感情を持たず必死に日陰で暮らしてきた姉妹の関係を通して描いていく。
高潔な理想を掲げるも、戦争の中で次第に硬直していったジェダイ・オーダーを信じられなくなったアソーカ。ジェダイの悪い面を実感しているアソーカが、これまで自分がいた世界とは異なる下層の人々と触れ合い、ジェダイを憎みさえするような声を聞くことで、共感しつつも激しいギャップを感じて葛藤していく。
そんな中で巻き込まれたパイク・シンジゲートとの危機により到達したアソーカの境地は、続く「ファイナル・シーズン」最後のエピソード群を見る上で、シーズン5 第20話「ジェダイの過ち」との間を埋めるので重要だ。
また、この4作に登場するトレース・マルテス、ラファ・マルテスの姉妹の関係は、妹のトレースのためを思って行動しているように見えて、実は姉のラファがひとりしかいない家族という関係を利用し、妹に対して利己的に振る舞い、妹を結果的に支配しようとしており、いわゆる「毒親」の問題を描いていると感じる(2人は姉妹だが、両親がいないため姉は保護者のような立場も担う)。
家族がおらず、唯一兄のような存在のアナキンを失ったとも言えるアソーカが、この家族にどのように関わっていくか。「家族」というキーワードで語られることの多い『スター・ウォーズ』シリーズで、こうした関係が描かれるのも興味深い。
「ファイナル・シーズン」最終4話は『エピソード3/シスの復讐』を別角度から描く
そして、「クローン・ウォーズ ファイナル・シーズン」最後の4話である第9話~第12話の「パートⅠ 忘れがたき旧友」、「パートⅡ 幻影の弟子」、「パートⅢ 崩壊」、「パートⅣ 勝利と死」が、アソーカ・タノとキャプテン・レックス、そしてダース・モールの戦いの果て、そして共和国の終焉を『エピソード3/シスの復讐』とは別の角度から描く「ファイナル・シーズン」の真骨頂とも言えるストーリーだ。
エピソードタイトルにパートナンバーも付けられていることからもわかるように、全編に渡って気合いがほかのエピソードと異なると感じるほど、「クローン・ウォーズ」にとって、そして『スター・ウォーズ』にとって特別なストーリー群と言える。音楽も、実写映画作品を彷彿とさせる仕上がりだ。

シーズン5 第14話~第16話の「悪の同盟」、「仕組まれた救世主」、「歪みゆく惑星」の後(コミック「スター・ウォーズ:ダース・モール ダソミアの後継者」を間に挟むが)、混乱が続くマンダロアに、その大きな元凶であるモールが再び野望とともに戻ってくる。
マルテス姉妹との出会いを経たアソーカは、マンダロアを取り戻したいボ=カターン・クライズに協力し、かつての師であるアナキン・スカイウォーカーとオビ=ワン・ケノービら共和国軍にモールの出現を連絡。中立を保っていたマンダロア、そしてアソーカはレックスら共和国軍とともにモールの討伐に乗り出すが、「その時」は近付いて来る…
時系列は『エピソード3/シスの復讐』の直前からスタートし、エピソードが進むにつれて『エピソード3/シスの復讐』でよく知っている出来事が間接的に語られ、何が起こるかわかっている我々にとってはスリリングな展開だ。『エピソード3/シスの復讐』の裏側に入り込み、その時にアソーカとレックスが何をしていたか、いわばB面のようなストーリーとなっており、『エピソード3/シスの復讐』を見たのであれば、このためだけに「クローン・ウォーズ」の鑑賞をすすめたいとすら思える。
アソーカの視点から描かれる、『エピソード3/シスの復讐』で起きた銀河規模の災厄。随所に『エピソード3/シスの復讐』での出来事が示唆されながら、絶望的な状況となっていく中での怒涛のアクションと共に、アソーカにとって、またレックスにとっての愛すべき兄弟たちとの別れを重厚に描く。共和国の崩壊とともに、勇敢で気のいいクローン達の兄弟も、兄のような存在の師も失われてしまったのだ。
「スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ」は、ルークの父であるアナキン・スカイウォーカーと将軍であったオビ=ワン・ケノービの最盛期であったクローン戦争を、プリクエル・トリロジーでは開戦と終戦のみに留まってしまったため、八面六臂の彼らの活躍を語ることでひとつの役目を果たせるはずだったが、彼らとともにいたアソーカ・タノという新キャラクターの視点を取り入れた。
アソーカ・タノはシリーズ開始当初、アナキンに弟子がいたことに後付けな印象もあったし、『エピソード1/ファントム・メナス』で散ったダース・モールをシリーズの人気のため復活させたことに節操のなさを指摘する声もあった中で、まさかこの2人がこんなにドラマチックな存在になるとは!
アナキンとオビ=ワンの活躍だけではなく、「クローン・ウォーズ」は共和国崩壊と排斥に至るまでのジェダイの信頼の低下により説得力を持たせるとともに、「クローン・ウォーズ」はアソーカ・タノの成長のストーリーだったことが、この「ファイナル・シーズン」でより明確になった。シリーズ序盤の幼年期は終わり、「スカぴょん」と軽口を叩いていたイノセントは失われ、アソーカはつらい別れとともに現実を知る聡明な大人になった。
「スター・ウォーズ 反乱者たち」で描かれたように、レックスもまた無機質な支配を脱して自由な荒野へと踏み出していく。番号を付けられていた人間が、自由を得るという構図はジョージ・ルーカスの商業デビュー作『THX 1138』を彷彿させもする。
クローン戦争の終戦、共和国の終焉とともに、「クローン・ウォーズ」のシリーズが終わるのは必然だ。だが、アソーカの戦いは終わらないし、生き延びた他のキャラクターたちも共和国から変貌した帝国の時代の下で戦い続けていく。
「ファイナル・シーズン」鑑賞後に、「スター・ウォーズ 反乱者たち」などの既発表の作品を見ればよりドラマを感じることが出来るようになり、幾重にも連なるシリーズならではの面白さが楽しめるだろう。
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劇場版、シーズン1~6も配信中
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