ついに本日公開!『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のネタバレなしレビューです。
『スター・ウォーズ』初となる、エピソードナンバーが付いていない単独実写映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』。
従来のサーガの枠組みとは別に、『スター・ウォーズ』ギャラクシーの様々な時代、キャラクターにフォーカスを当てた「スター・ウォーズ アンソロジーシリーズ」は、2018年に若き日のハン・ソロを描いた作品を、2020年には内容未発表の作品の公開が予定されており、『ローグ・ワン』は『スター・ウォーズ』が未来に目指す方向の試金石でもあった。
そんな中で、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』はシリーズ第1作として素晴らしい第1歩を踏み出したと思う。
ファンが見たかった『スター・ウォーズ』映画
「スピンオフ」でも「アナザーストーリー」という言い方でも、主となる作品に付随した作品であるという意味で一緒だが、本作は様々な面で『エピソード4/新たなる希望』を前提として製作された作品だ。
こうした作品にファンが求めるものは何かをよく研究されて作られた『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』は、確かにこれまでファンが夢想し、見たかったシーンを詰め込み、この内容であれば入れておきたいお約束を守った、ファンにとっての幕の内弁当的な映画だった!
これまで、『スター・ウォーズ』映画では見られなかった物語や展開を、これまで映画以外のメディアで発表されたスピンオフが補っていたが、『スター・ウォーズ』の本家たる映画の大スクリーンで展開されると、これはもうファンはテンションが上がらずにはいられない。
このシリーズが『スター・「ウォーズ」』であったことを思い出させるような、ブラスターの弾が無数に飛び交い、爆風と埃が立ち上るリアリティのある銃撃戦。これは現実の紛争地域での戦闘が、『スター・ウォーズ』の武器に持ち替えたかのようだ。
かと思えば、Xウィングやタイ・ファイターといった『スター・ウォーズ』オリジナル・トリロジーの宇宙船が最新技術で飛び交う宇宙戦シーンは、思い切りケレン味を利かせた爽快感のある描写に振り切っている!
そのいずれも、ファンが見たかった『スター・ウォーズ』だ。
その上で、「アンソロジーシリーズ」という番外編ということで従来の『スター・ウォーズ』の映画的文法を破壊しており、この題材にマッチするように取捨選択が行われたことが伺え、意欲的な作品だと感じる。
「希望」をつなぐ、勇気と自己犠牲の物語
また従来の『スター・ウォーズ』サーガは、フォースのライトサイドとダークサイドという名の通り、善と悪の境目が明確で、そのボーダーラインを越えて転向する様もわかりやすいものだった。
しかし、『ローグ・ワン』はこれまで善の組織として描かれていた反乱同盟軍も一枚岩ではなく、不信や対立、汚れ仕事といったダーティーな面も描かれていたり、帝国軍の所属からチーム「ローグ・ワン」に加わるメンバーが2名いるなど、本作における善悪の境界は非常に曖昧だ。
つまり『スター・ウォーズ』のストーリーにあった神話性というものは、『ローグ・ワン』では失われている。代わりに、善も悪も混沌とした中で、必死にそれぞれが願う「希望」をバトンのようにつなぐ人々の姿が描かれる。だから、チーム「ローグ・ワン」自体が自分たちの信念に基づいて行動する、文字通りの「はぐれチーム」なのである。
映像面で驚き、興奮したのは戦闘シーンだけではなく、キャラクターを表現するVFXだ。今、撮影出来るはずのない人物が、新作映画に登場する。この技術がより発達すれば今後、時を超えた様々な映像表現が可能になるのではないだろうか。
後付け設定とはいえ、この勇気と自己犠牲の物語によって『エピソード4/新たなる希望』の見方も変わってくる。絶望に包まれる中で、なんとかつないだかすかな希望の灯。それが灯ることを、我々はずっと前から知っている。
2005年より「スター・ウォーズ ウェブログ」を運営。「『スター・ウォーズ』究極のカルトクイズ Wikia Qwizards<ウィキア・クイザード>」世界大会優勝者。ディズニープラス公式アプリ「Disney DX」のオリジナル動画や記事など、様々な出演/執筆も行っています。2010年、『ファンボーイズ』日本公開を目指す会を主宰しました。