『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』のネタバレなし、最速レビューです!
現時点までの日本における本作のプロモーションにて明らかになっている以外の要素には言及せずにレビューした、『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』をご覧になった方も未見の方も、いずれもお読み頂ける内容にしております。
ただ、どの程度までネタバレを気にするかは、人それぞれの価値観によって異なる部分もあるかと思いますので、作品の印象なども含めてレビューを目にしたくないという方は、ここから先は下部へスクロールしないようご注意ください。
配信プラットフォームから、映画館にやってきた「マンダロリアン」
『スター・ウォーズ』初の実写ドラマシリーズであり、初の動画配信サービスオリジナル作品となった「マンダロリアン」。
2019年の配信開始以来、「マンダロリアン」の3つのシーズンと「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」で描かれてきたディン・ジャリンとグローグーは、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』にてスカイウォーカー・サーガが完結して以降の約7年の間に『スター・ウォーズ』シリーズを牽引する新たなスターキャラクターとなった。
映画の主要キャラクターは登場せず、ボバ・フェットのようなヘルメットのマンダロリアン、ヨーダの種族の子ども、アグノート、IG-88に似たドロイドなど、「兄におもちゃを取られた弟」の遊び場のようなキャラクター構成ではじまったシリーズは、孤独な孤児だった非情な賞金稼ぎのディン・ジャリンがかつての自身と似た者である身寄りのない幼いグローグーに情を抱き、ともに旅をする西部劇や時代劇のような普遍的なドラマフォーマットでファンの心をつかんでいった。
独立してはじまったストーリーはやがて、様々な既知の作品やキャラクターのドラマとつながっていき、『スター・ウォーズ』シリーズの新たなハブ作品となっていく。
この約7年の間は、『スター・ウォーズ』が映画館ではなくディズニープラス独占配信作品にて展開していた期間であり、「マンダロリアン」はその筆頭として牽引してきたわけだが、そんな「マンダロリアン」が、モニターやスマートフォンではなく、はじめて映画館の大スクリーンにやってきた。
まず、多くの『スター・ウォーズ』ファンはこれまで家庭内で楽しんできた「マンダロリアン」の新しいエピソードをはじめて映画館で体験出来ることに興奮を覚えるだろう。ディン・ジャリンとグローグーの活躍、そしてルドウィグ・ゴランソンの楽曲を、映画館の大音響と大スクリーンで楽しめるなんて!
コロナ禍と、配信プラットフォーム独占作品は相性が良かった(「マンダロリアン」シーズン1は、本格的なコロナ禍の前だったが)。最新エピソードをいち早く鑑賞して、SNSやWEBにて世界同時のウォッチパーティーのように物理的なバリアを超えてサプライズに熱狂してもいいし、家にいる時間が増えたことで気になっていたシリーズをイッキ見してもいい。
それでもいつか、映画館で『スター・ウォーズ』の初日を熱気とともに見る日が来るはず。そう希望を抱いていた方々も少なくないと思う。
あれから月日は過ぎ、ついにその時はやって来た。まったく新しい『スター・ウォーズ』映画を、映画館の暗闇の中で没入感ととともに体験出来るという、この感覚はやはりファンにとって非常に興奮するものだと改めて感じた。
次から次に見せ場を繰り出す、「2026年のスター・ウォーズ映画」
そんな『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』は、オープニングからエンディングまで見せ場を次々とつないでいく映画だ!
ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』の制作にあたって影響を受けた連続活劇(シリアル)のように、ディン・ジャリンとグローグーは危機、また危機に連続して見舞われ、とんでもないムチャをし、そしてあざやかに敵やトラブルを撃退していく。
凄腕の賞金稼ぎらしい俊敏で容赦のないアクション、様々な武器を用いた格闘、無敵のべスカー、そしてそれらのカメラでの見せ方など、ディン・ジャリンの魅力は本作でも輝く。
「マンダロリアン」シーズン3を経て、出会いと別れ、そして再度ともに歩むことを選んだディン・ジャリンとグローグーの関係も、ただグローグーが守られるだけではなく頼れる相棒へと成長をしている。
本作のタイトルが『マンダロリアン・アンド・グローグー』であることにも納得だ。ドラマシリーズを通して描いてきた2人の絆が、より成熟したものとなっているのも見どころである。
また、「マンダロリアン」らしさを構成する要素として前述のルドウィグ・ゴランソンによる音楽も欠かせない。民族音楽や電子音楽など、多種多様な楽器を用いて変幻自在な楽曲を展開。
70人編成から106人編成に増やしたオーケストラサウンドは映画館に合うもので、デジタルビートを用いた楽曲もあるなど、『スター・ウォーズ』のイメージに捉われない音楽は今回も健在だ。エンディングの楽曲も遊びがあってこれまでに聴いたことのない『スター・ウォーズ』のエンドロールになっている!
ディン・ジャリンとグローグーは、ドラマシリーズの多くのエピソードと同じように仕事のターゲットを追い詰めるため、レイザー・クレストで銀河の様々な場所へと飛び回る。レイザー・クレストは場面を次から次へと転換させていき、観客にまた新たな情景を見せてくれる。
ただでさえ、観客の注目を惹く展開の連続である『スター・ウォーズ』映画の中で、ここまで展開が矢継ぎ早な作品もないのではと思うほどだ。
この見せ場を連続させる構成は、古くは前述した連続活劇(シリアル)であるし、少し前であれば『スター・ウォーズ』シリーズも含めたハリウッド映画が盛り上がっていた1980年代のアクション映画、そして現代のスマートフォンのスクリーンでスワイプすれば次から次へと現れる縦型ショート動画をも想起させ、人々をスクリーンに夢中にさせる技術が駆使されている。
これは2026年にアップデートされた『スター・ウォーズ』と言えるだろう。フォースではなくスマートフォンが常にともにあり、刺激を求めている現代の観客を楽しませるために粋を集めて作られたようだ。
直近の作品で、同じような映像体験をした映画として『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』が思い浮かべられた。登場人物のアクションシーンは次々に用意され、そのシチュエーションは飽きない工夫がされ、最高峰の映像クオリティでそれを表現していく。
映画館の外の出来事は忘れ、今、この時のスクリーンに映る展開に目と心を奪われていく。見ている間は多幸感にあふれた時間を過ごせる。
デジタルとアナログを適所で用いる視覚効果
サマーシーズンの大作映画というジャンルを1977年に作り上げた『スター・ウォーズ』が、『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年)以来、8年ぶりの5月公開作品となったことも見逃せない(『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の日本公開は6月29日であったが)。
難しいことは考えず、頭を空っぽにして楽しめる。これぞサマームービーと言えるような一大娯楽作だ!
一方で、矢継ぎ早に見せ場は展開されることによって、「マンダロリアン」がドラマシリーズであったこともあり「これはドラマシリーズの見どころのダイジェスト総集編を見ているのでは?」という気にもなってくる。
本作でゲスト的に登場する、もう一人の孤児であるロッタ・ザ・ハットとの出会いによるディン・ジャリンとグローグーのドラマもあるものの、「マンダロリアン」シリーズで描かれてきたエモーショナルな場面を期待すると肩すかしとなるかも知れない。
ただ成長したロッタ・ザ・ハットは、ジェレミー・アレン・ホワイトの好演もあり、父親の影から脱しようともがく魅力的なキャラクターとなっている。
『スター・ウォーズ』からはじまったサマームービーといえば、VFXを駆使した劇場で見たくなる迫力の映像。もちろん『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』も「マンダロリアン」初の劇場公開作品というだけあって視覚効果は一級品。
面白いのが、「マンダロリアン」にて知られるようになったステージクラフトや、CGで表現された迫力の戦闘シーンだけではなく、『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』は見せ場の連続から落ち着いたところで、グローグーやアンゼランのかわいらしい活躍も多く描かれているため、パペットやアニマトロニクスの技術も堪能出来ること!
セリフは用いられず、キャラクターの動きだけでドラマを表現していく場面も。
デジタルとアナログな技術が使い分けられ、両者を適所で用いて融合させた映像となっていることに『スター・ウォーズ』らしさ、「マンダロリアン」らしさが感じられるのだ。
『マンダロリアン・アンド・グローグー』からでも楽しめる!
『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』のストーリーは、「マンダロリアン」の3つのシーズンと「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」の先にあるものだ。宣伝プロモーションにおいては、ジョン・ファヴローの言葉をもとにこの『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』を最初に見ても楽しめることが謳われている。
実際のところ、「マンダロリアン」シリーズを見ていなくても、この『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』から鑑賞して楽しめると思う。
それは本作のストーリーが、シーズン3から続く連続性が強いわけではないからだ。マンダロリアンは凄腕の賞金稼ぎで、グローグーはフォースを操れる赤ちゃん。擬似親子の2人は、帝国軍の残党を相手に戦っている。それだけわかれば十分だ。
もちろん、いきなり説明なくストーリーの渦中に飛び込んだようになるだろう。でも、『新たなる希望(エピソード4)』や黒澤明の映画も、詳しい説明がないままに物語ははじまっていく。わからない部分があっても、まずは映画に夢中になってもらうことは出来るはずだ。
むしろ、1作だけ事前に見るとすれば、ロッタ・ザ・ハットが登場する映画版『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』を見ておいた方がいいかも知れない。
また、「スター・ウォーズ 反乱者たち」のゼブことガラゼブ・オレリオスもディン・ジャリンの新共和国の仲間として多く登場するが、ミッションを一緒にサポートしてくれる仲間と思ってもらえれば大丈夫だ(『ミッション:インポッシブル』シリーズでヴィング・レイムスが演じたルーサー・スティッケルのようなものだ)。
『マンダロリアン・アンド・グローグー』で興味を持ったら、後から「マンダロリアン」や「反乱者たち」を見れば良い。とにかく難しく考えなくていい、ジェットコースタームービーだ。
一方で、ファンに人気のキャラクターや、思わぬキャラクターの登場など、大きなサプライズを仕掛けてファンダム中に大きな話題と波紋を起こしてやろう、という感じもない。サプライズのためのストーリーになっておらず、そこが良い。
サマーシーズンの「マンダロリアン ホリデースペシャル」
総じて、一言で言うならば『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』は、「マンダロリアン ホリデースペシャル」といった風合いの映画だ。
「マンダロリアン」の2時間スペシャル特番のような、お祭り騒ぎの作品である。シガニー・ウィーバーやマーティン・スコセッシの出演も、スペシャルゲストのように華を添えてくれる。
『スター・ウォーズ』ファンであれば、これまでの作品に登場したクリーチャーなどが最新のVFX技術で動き回り、アグレッシブに戦うという、作品世界が拡張していくような「マンダロリアン」らしいシーンが見られ、心地よい展開スピードも相まって高揚感のある映像体験が得られるはずだ。
しかし、「マンダロリアン」シリーズ、『スター・ウォーズ』シリーズ全体のストーリーの核心的な前進には至らない映画である。この作品で起きた出来事は、後の銀河に影響を及ぼすものではあるし、グローグーもますますディン・ジャリンの相棒にふさわしい存在となっていくが、本作のみでも楽しめるということは、シリーズ全体の大きなストーリーラインの中での比重もそれに比例することになる。
それでも、映画館のスクリーンに映るディン・ジャリンとグローグーの活劇は興奮のひとときだ。見せ場の連続だから日本であれば、2人に声援を送るような応援上映も合いそうだ。素晴らしいサマームービーシーズンの幕開け、また『スター・ウォーズ』を映画館で見る楽しみの復権となるような映画である。

















コメント