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「スター・ウォーズ:アソーカ」第8話「パート8:ジェダイと魔女と大提督」レビュー/トリビアチェックポイント【ネタバレ注意】

(C)2023 Lucasfilm Ltd.

 Disney+ (ディズニープラス)で配信中の「スター・ウォーズ:アソーカ」第8話「パート8:ジェダイと魔女と大提督」レビュー/トリビアチェックポイントです。

 この記事では、「スター・ウォーズ:アソーカ」「パート8:ジェダイと魔女と大提督」のレビュー(感想・考察・批評)やトリビアの解説といった、このエピソードをより深く知るためのテキストを綴っています。

 この記事はネタバレがございますので、「スター・ウォーズ:アソーカ」「パート8:ジェダイと魔女と大提督」本編鑑賞後にご覧ください。

 「スター・ウォーズ:アソーカ」の他のエピソードについては、以下のカテゴリーからご参照ください。

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「スター・ウォーズ:アソーカ」第8話「パート8:ジェダイと魔女と大提督」レビュー

最終話といえど、終わらざる物語

 「ゆきてかえりし物語」、あるいは「ゆきてかえらざる物語」か。

 「スター・ウォーズ:アソーカ」のフィナーレとなる最終話「パート8:ジェダイと魔女と大提督」は、やはりというべきか、大きなクリフハンガー(シーズンの最終回において、物語の結末を未解決にして先送りする作劇の手法)を仕掛けたエンディングとなった。

 それは、「マンダロリアン」、「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」、「スター・ウォーズ:アソーカ」といった新共和国時代を描いてきたシリーズを締めくくる、帝国残党と新共和国の間の戦いについてのデイヴ・フィローニが監督する映画作品の制作予定が発表されていることから、何かしら未解決のものは残り、マーベルの「アべンジャーズ」ではないがこれまでのシリーズが辿ってきたストーリー、キャラクターのほか、様々な要素が収斂していく将来の作品への壮大な前振りとなることは想像が出来る。

 しかし、そう思ってはいたものの、いざ実際のエンディングを見ると想像以上にこの先が気になる結末となっていた…

 その結末へと至るまで、前話までに再会したアソーカ・タノ、サビーヌ・レン、エズラ・ブリッジャーの3人がついに揃い、ついにスローン大提督、モーガン・エルズベスらナイトシスターの軍勢との対決に赴き、歴戦のジェダイたちによるライトセーバーアクションの数々が彩っている。

 ナイトトルーパーたちが放つブラスターを弾きながら、フォースとライトセーバー、さらにブラスターを駆使したヒーローたちによる一騎当千のアクションは痛快。

 そしてアソーカとモーガン・エルズベスとの「マンダロリアン」シーズン2「チャプター13:ジェダイ」以来の再戦は、2人が繰り出す剣術・体術の応酬、そしてそれを映し出すカット割りや構図のフレーミングが巧みでスリリング!

 「チャプター13:ジェダイ」ともまた異なる、2人の決闘を見ることが出来る。

「マンダロリアン」シーズン2 第5話「チャプター13:ジェダイ」のストーリー、レビュー、隠れ要素(イースターエッグ)やオマージュなどのトリビアを、ネタバレありで解説します。

 まさに「反乱者たち」のその先へ、アソーカ、サビーヌ、エズラらキャラクターたちの成長した姿を実写で表現されていることは「スター・ウォーズ:アソーカ」の制作にあたって大きなチャレンジであり、同時に意義深いことだと思う。

「スター・ウォーズ:アソーカ」第8話「パート8:ジェダイと魔女と大提督」ストーリー

(C)2023 Lucasfilm Ltd.

 モーガン・エルズベスから貨物搬入が終わったという報告を受けたスローン大提督は、ペリディア高軌道上のシオンの目を下ろして連結の準備に取り掛かるようイノック隊長に指示する。イノック隊長からはジェダイ・シャトルの位置を特定したと報告され、タイ・ファイター2機を送って発見次第、交戦するよう命じる。

 モーガン・エルズベスは、ジェダイは我々を止めることが出来ないでしょうと口にするが、スローン大提督は多くの帝国軍将校が反乱者たちを見くびるのを見て来たという。自身もひとりの英雄的なジェダイの犠牲者になったが、そのようなことは二度と繰り返さないと告げる。

(C)2023 Lucasfilm Ltd.

 スローン大提督は、グレート・マザーたちに我々の同盟は有益だったと証明されたと言い、グレート・マザーたちもスローン大提督に感謝の意を表する。さらに、モーガン・エルズベスにも星々を超えた夢を通しての呼び出しに応えたことに感謝し、影の贈り物という褒美を与える。

 ナイトシスターの掟、魔術、古の道への誓いを、そして新しい命のためこれまでの古い命を捨て、忠誠心と命を捧げられるかと問われたモーガン・エルズベスはそのすべてに同意すると、魔術を施されたその顔にはグレート・マザーたちのような黒い影が落ちる。

 さらにグレート・マザーたちは、ナイトシスターの魔術で召喚されたタルジンの剣(つるぎ)をモーガン・エルズベスに与えるのだった。

 移動するノティの集団の真上をゆっくりと飛行するT-6シャトル内では、エズラ・ブリッジャーがライトセーバーを制作していた。言うことを聞かないエズラに対して、誰からライトセーバーの作り方を教わったのかと尋ねるヒュイヤン。そこに居合わせたサビーヌ・レンが、ケイナン・ジャラスだと教える。

 ほぼすべてのジェダイ・テンプルにいたヤングリングたちを教えたというヒュイヤンは、ケイナン・ジャラスにもライトセーバーの作り方を教えたのだという。さらにヒュイヤンはケイナンの予備のブレードエミッターを持っており、これによってエズラの新しいライトセーバーは無事に完成する。

 エズラが声をかけようとすると、サビーヌはすでにどこかへ消えていた。エズラは、アソーカとサビーヌの間に何があったのかヒュイヤンに聞く。

 銀河内戦の末期、帝国はマンダロアの地表全体を粛清してサビーヌの家族全員も含む膨大な数の犠牲者を出した。この出来事の後、サビーヌは誤った理由によりジェダイの訓練を積んでいるとアソーカは恐れたという。サビーヌが潜在能力を解放すれば危険になると、アソーカは感じたのだ。

 サビーヌは、T-6シャトルの外へと出てアソーカと話をする。サビーヌがエズラの元へ向かうため、星図を破壊せずにスローン大提督を呼び戻そうとするベイラン・スコールらに渡したこと。アソーカは、サビーヌにこのことを知っていると告げる。

 謝罪するサビーヌに、アソーカは自身もいままで何度も苦渋の選択をしてきており、理由を誰にも理解されないこともしばしばあったと言う。しかし、自身の師であるアナキン・スカイウォーカーは、他の者たちが背を向けたとしてもいつでもアソーカに味方してくれた。だから、次に何が起きてもアソーカはサビーヌの味方でいるという。

(C)2023 Lucasfilm Ltd.

 エズラがT-6シャトルの外へ出てて来たちょうどその時、2機のタイ・ファイターが攻撃してきた。被弾してスタビライザーを損傷しノティたちの上に落下しようとするT-6シャトルを、アソーカとエズラはフォースで食い止める。コックピットに入ったサビーヌはT-6シャトルのエンジンを稼働させ、前方から飛んできたタイ・ファイター2機にシャトルの翼を直撃させて撃墜。

 しかし、T-6シャトルも墜落してしまう。

 タイ・ファイターによる攻撃成功と、直後の通信途絶の報告を受けたスローン大提督は、その攻撃地点を確認。ジェダイの宇宙船が飛べないとすると、スローン大提督らの出発を止めに来る可能性は大幅に減ると考え、とどめを刺すべく地上攻撃を指示するのだった。

 T-6シャトルを修理するヒュイヤンを残し、ハウラーに乗ってスター・デストロイヤー キメラとシオンの目に近付くアソーカ、サビーヌ、エズラ。キメラからのターボレーザーによる攻撃をくぐり抜け、フォースでダソミリの要塞の扉を開けて内部に侵入。

 迎え撃つナイトトルーパーたちを、ライトセーバーとフォース、ブラスターで全滅させる3人。だが、グレート・マザーたちが呪文を唱えると、倒したはずのナイトトルーパーたちが再び起き上がって蘇った。数に圧倒されるも、扉で閉じ込めることで先へと進む一行。

 スター・デストロイヤー キメラはシオンの目と連結。出発準備を整えたが、アソーカらの動きが早く、乗り込まれる可能性が出てきたためスローン大提督はモーガン・エルズベスに彼らの足止めを依頼。帝国のため、と言うスローンだったが、モーガン・エルズベスは彼が去ってから、ダソミアのためとつぶやく。

 スター・デストロイヤーを目指すアソーカ、サビーヌ、エズラの前に、モーガン・エルズベスが立ちはだかる。アソーカはスローンを止めることを優先するため、自身がモーガンを引き受け、サビーヌとエズラを先に行かせる。

 サビーヌとエズラは2人のデス・トルーパーと遭遇し、辛くもこれを撃破。しかし、その間にスター・デストロイヤー キメラは離陸をはじめていた。その距離は、エズラでも跳びきれないほど。サビーヌは、交互にフォースを使えば出来ると言う。

 ジャンプしたエズラをサビーヌが後押しして、なんとかスター・デストロイヤーにたどり着く。次はサビーヌの番だが、その背後にはモーガン・エルズベスとナイトトルーパーらと戦うアソーカの姿があった…

アナキンが思い出させてくれた、弟子を信じる心

(C)2023 Lucasfilm Ltd.

 主人公アソーカ・タノの心情とその成長において、「スター・ウォーズ:アソーカ」がこの8話を通して描いてきたことは、サビーヌとの過去のわだかまりや、現在進行形の失敗と共存しながら共に歩み、不信感を乗り越えて再び一緒にいることを選ぶまでのストーリーだった。

 アソーカ・タノとサビーヌ・レンがわだかまりを残すことになった原因は、銀河内戦の末期に起きた帝国によるマンダロアの粛清によってサビーヌの家族全員が殺害された後、アソーカはサビーヌが誤った理由でジェダイの修行を積んでいることを恐れ、その潜在能力を解放することに危険を感じたのだと明かされる。

 「パート4:堕ちたジェダイ」でベイラン・スコールは、アソーカがサビーヌのことを信じなかったことにより、サビーヌの家族はマンダロアで死ぬことになったとも語っており、おそらくマンダロアの大粛清においてアソーカとサビーヌは極限状況の中、お互いに不信をつのらせることになったのではないかと思われる。

 ダークサイドに近付く道である恐怖、悲しみや怒り、憎しみをサビーヌが増大させていたことは容易に想像がつく。そしてダース・ベイダーとなってしまったアナキン・スカイウォーカーを師に持つアソーカが、こうしたダークサイドに至る道の危険性を熟知していることも察することが出来る。

 しかし、「スター・ウォーズ:アソーカ」第5話「パート5:影武者」にて、ベイラン・スコールとの戦いの末に死へと近づく体験の中でアナキンと対話を果たし、アナキンをはじめとした多くの人々を救えなかった過去に囚われず、未来でまだ出来ることをしようと生きることを選択したアソーカ。

 周りが誰一人味方してくれなくても、アナキンだけは信じてくれたにも関わらず、自身の弟子であるサビーヌを信じられなかった後悔。アナキンが残した言葉を思い返し、師と同じようにこれから何が起きてもアソーカはサビーヌの味方でいることにしたのだ。

 「スター・ウォーズ:アソーカ」は、後半にあたる前述した「パート5:影武者」から弟子のサビーヌ、師のアナキンというアソーカを軸にした師弟関係の構図が明確になった。「パート7:再会と別れ」でも、アソーカはアナキンの教えが記録されたホログラムを投影して訓練しており、今も心の中で大切に思っていることがわかる描写がある。

 そしてアソーカが、アナキンがかつて自身にしてくれたようにサビーヌの味方で居続けることを伝えて、共にペリディアで生きていくことになった「パート8:ジェダイと魔女と大提督」のエンディングでは、アナキン・スカイウォーカーの霊体がその姿を見守っている。

 「パート5:影武者」に登場したアナキンは、少なくともジェイセン・シンドゥーラによってアナキンとアソーカがライトセーバーを交える音が認識されていたことから、何らかのフォースを通じた事象が起きていたと思われるが、アソーカが心で見たビジョンとも解釈出来るため、アナキン本人の人格の言動であったかは断定出来なかった。

 しかし、この「パート8:ジェダイと魔女と大提督」では現実のペリディアにアナキン・スカイウォーカーの霊体が現れているため、『エピソード6/ジェダイの帰還』以外ではじめてとなる登場だ(『スカイウォーカーの夜明け』でも、レイの元にアナキン・スカイウォーカーの声は届いていたが)。

 『エピソード6/ジェダイの帰還』でのルーク・スカイウォーカーのように、アソーカの視線の先には遠くから見つめるアナキンの霊体がたたずんでおり、弟子のサビーヌ、師のアナキンというアソーカを軸にした師弟関係の構図に最後のアクセントを打っている。

 アソーカはアナキンと視線を交わしたのか?「スター・ウォーズ:アソーカ」は視聴者の解釈にゆだねる描写が多く、説明的ではない表現に好感が持てる。様々な見方が楽しめることも、作品を豊かにしていく手法のひとつだ。

 スローン大提督の居場所の手がかりとなる星図の争奪戦から、スローンの別銀河からの帰還の阻止、また一方でエズラ・ブリッジャーと再会して連れ戻すため、別銀河のペリディアへと旅立ったアソーカ・タノとサビーヌ・レン。

 この旅の結果として、スローン大提督は別銀河からの帰還に成功してしまい、アソーカとサビーヌはペリディアに取り残され、代わりにエズラがかつての仲間であるヘラ・シンドゥーラの元へと戻ってきた。まるで数々の昔話やおとぎ話のように、入れ替わってしまった。

 ヒュイヤンが一緒にいるようにと言っていた言葉は、アソーカとサビーヌはペリディアでお互いに離れず、共にあるようになったことで実現した。

 スローンが言うように、今回はスローンが勝利し、アソーカらは敗北して別銀河に取り残される結果になったのかも知れない。しかし見方を変えれば、アソーカとサビーヌの関係が修復されるという、2人の心のドラマとしては良い結末となったと言える。

フォースを覚醒させたサビーヌが意味するもの

 そのサビーヌ・レンは、「スター・ウォーズ:アソーカ」を通してアソーカの弟子という側面がそのパーソナリティに加えられた。

 「反乱者たち」でもケイナン・ジャラスから剣術を教わってはいたが、フォースの使い方についても学んでいるというフォース感知者で、よりジェダイに近いアソーカとの師弟関係が描かれたことは「反乱者たち」から見ているファンにとって意外だった点だろう。

 「スター・ウォーズ:アソーカ」のシリーズを通して、フォース感知能力についてはいまひとつだという前振りがあったため、「パート8:ジェダイと魔女と大提督」でついにサビーヌが本格的にフォースを用いたテレキネシスの力を発揮出来たことは、予想は出来るものの王道な展開に胸がすく。

 これまでサビーヌにはフォース感知者である描写はなく、「スター・ウォーズ:アソーカ」劇中でも長年ジェダイを見続けてきたヒュイヤンにジェダイ・オーダーなら受け入れなかっただろうと言われてきたサビーヌが、ここまでのフォースの潜在能力を覚醒させたことは、ジェダイ・オーダーが滅びたことで恐れの感情が生まれる前の幼少期以前から候補生を育てなければならないという掟はなくなり、またギフテッドのような才能だけで左右するものでもなく、生けるものすべてに流れているフォースを操るのは本人の意思と努力と才能の掛け合わせであるという、他の技能に近い価値観を打ち出してきたということにも感じられる。

 ただ、『フォースの覚醒』にはすべてを結びつけるフォースの側面である宇宙のフォース(コズミックフォース)が銀河内戦以降、休眠状態であり『フォースの覚醒』でレイらのフォースが文字通り、覚醒したという設定がある(書籍「スター・ウォーズ/フォースの覚醒 ビジュアル・ディクショナリー」)。

 サビーヌが覚醒したのは別銀河での出来事だったため、既知銀河に流れるフォースには影響がなかったのだろうか…

全8話では描き切れなかったベイラン・スコールとシン・ハティ

 また、アソーカとサビーヌが残されたペリディアには、同じようにベイラン・スコールとシン・ハティも残されてしまった。スローンが発言していたように、ベイラン・スコールとシン・ハティはモーガン・エルズベスが使っていた傭兵であり、目的は自身が既知銀河に帰還することなので、ただの傭兵を別銀河に置いてこようと重大なことではないというわけだ。

 スローンやモーガン・エルズベスとも異なる目的を持っていたようだったベイラン・スコールとシン・ハティの師弟。さらに、この師弟の中でも力を求めるシン・ハティと、何度も何度も繰り返し続ける歴史の「環」を終わらせる「はじまり」を求めているというベイラン・スコールの方向性は異なることが露見し、別行動を取ることになった。

 魅力的な敵役であったベイラン・スコールとシン・ハティだが、「パート8:ジェダイと魔女と大提督」への登場はわずかであり、この師弟を描くには「スター・ウォーズ:アソーカ」の全8話は短すぎた。

 この段階では思わせぶりなキャラクターであり、モーティスのファーザー、サン、ドーターがあるなど既知銀河のフォースの象徴的な存在の痕跡が残るペリディアとともに、今後の作品で詳細が語られることを期待したい。

 惜しまれるのは、ベイラン・スコール役のレイ・スティーブンソンは2023年5月に急逝しているということだ。レイ・スティーブンソンによるベイラン・スコールを見ることはこれからも叶わないことがわかっていると、改めてその逝去が悔やまれるとともに、ファーザーの像の上に立つベイラン・スコールの姿もよりミステリアスで、その視線の先にあるものが気になって仕方がなくなる。

新たな「ジェダイの帰還」エズラと、「帝国の後継者」スローン

 そしてアソーカ、サビーヌと入れ代わりで既知銀河へと帰ってきたエズラ・ブリッジャーは、また新たな「ジェダイの帰還」ということになる。

 「スター・ウォーズ:アソーカ」の後、ファースト・オーダーが本格的に台頭して表舞台に出てくる『フォースの覚醒』までは約25年の時間があるわけだが、この間にエズラ・ブリッジャーはどのような役割を果たすのだろうか?

 「反乱者たち」のエンディングは、オリジナル・トリロジー制作後に作られたキャラクターであり、強力な力を持つようになったエズラと帝国軍でも有数の戦略家であるスローン大提督を退場させたことで、その後の反乱軍と帝国軍の戦いに関与出来ないようにし、銀河の表舞台に出ていておかしくない2人の影がオリジナル・トリロジーにおいて見られないことに説得力を与えるものだったと言える。

 エズラとスローン大提督が銀河に帰ってきたことにより、新共和国と帝国軍の残党の今後の情勢が気になるところだ。

 「マンダロリアン」シーズン3「チャプター23:スパイ」では、帝国軍の残党の軍将たちのシャドー評議会にてギラッド・ペレオンがスローン大提督が帰還すれば軍事力再興の先触れになると期待していた。

 ペレオンの期待は叶い、モフ・ギデオン亡き後の帝国軍の残党が盛り返すことになりそうである。

 スローン大提督は、3日(ローテーション)を要したとしてもダソミリの要塞から棺状の「貨物」を積み込んでいた。ペリディアからの出発に時間をかけてまで積み込んだ「貨物」は、今後の帝国軍の残党にとって重要なものとなるだろう。

 レジェンズの小説「帝国の後継者」からはじまるスローン三部作のように、スローン大提督が新共和国に大きな脅威をもたらすことになりそうだ。

 その時、エズラ・ブリッジャーはどう動くのか?同じ年齢であるジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの動向や、そうなるとレイア・オーガナとハン・ソロまで気になってしまう!

 『フォースの覚醒』からはじまるシークエル・トリロジーの間の長い期間に、まだまだ語られていない戦いの歴史が明らかになることに期待したい。

スローンは「帝国のため」に動いている?

 「スター・ウォーズ:アソーカ」でのスローン大提督については、その行動の目的に違和感がある。「パート8:ジェダイと魔女と大提督」において「帝国のために」というセリフを口にしているなど、帝国軍人の色合いが強い言動が目立っている。

 未知領域のチスという種族であるスローンことミスローニュルオドは、チス・アセンダンシーと呼ばれるチスの政府のために行動しており、未知領域に正体不明の脅威が潜んでいることを懸念し、帝国が同盟を組むに値するか潜入を命じられたことが、正史(カノン)においてスローンが帝国軍に加わったいきさつだ。

 そのため、帝国に心から忠誠を誓っているわけではないと思うのだが、別銀河のペリディアへ送られてチス・アセンダンシーのために働くことも、帝国の中で権力を築くことも出来ずにいた10年間の間に心境の変化があったのだろうか。

 「スター・ウォーズ:アソーカ」での描写だけを見てしまうとスローンも純然たる帝国軍人のように思えて違和感などないだろうが、スローン三部作の著者であるティモシィ・ザーンが正史(カノン)において書いた小説、またコミックでは上記のような背景が語られているため、発表媒体は異なれどキャラクター性は同一だと思えるように整合するべきところである。

続いていく物語、振り返る物語

 全編を通して色彩は曇天の灰色が多くを占め、「クローン・ウォーズ」や「反乱者たち」、また「バッド・バッチ」とはまたひと味違うケヴィン・カイナーの音楽も相まった重厚感が、他のディズニープラスオリジナルシリーズとも異なる独特のテイストを生み出している「スター・ウォーズ:アソーカ」。

 繰り返しにはなるが、「マンダロリアン」、「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」、「スター・ウォーズ:アソーカ」といった新共和国時代を描いてきたシリーズを締めくくるデイヴ・フィローニが監督する映画作品の制作が発表されているため、「スター・ウォーズ:アソーカ」の続きはいずれ語られることになる。

 『スター・ウォーズ』の正史(カノン)をはるか彼方の銀河系まで拡げた物語は、まだ終わらない。だがこれで一区切りを迎え、その続きを見ることが出来るのは2023年現在、まだ何年も要することだろう。

 その結末やキャラクターの運命がわかっても、それで作品への興味を終わりにせず、見返してみたり、膨大な過去作を振り返ってみたりして、続きがしばらく公開されなくてもひとつの作品をずっと楽しんでいく。配信でドラマシリーズが次々と公開される中、作品を消費しない楽しみ方も大切にしたいと思うのだ。

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「スター・ウォーズ:アソーカ」「パート8:ジェダイと魔女と大提督」トリビアチェックポイント

「ナルニア国物語」の影響を受けたエピソードタイトル

 「パート8」のエピソードタイトルの原題「The Jedi, the Witch, and the Warlord(「ジェダイと魔女と大提督」)」は、シリーズの一部が映画化されたファンタジー小説「ナルニア国物語」の第1巻「The Lion, the Witch and the Wardrobe(「ライオンと魔女」、近年の新訳版では「ライオンと魔女と洋服だんす」)」をもじったものとなっている。

 同じ単語を使用している「the Witch」のほか、「the Wardrobe(洋服だんす)」と「the Warlord(軍将、ここではスローンを指して大提督)は語呂を合わせているようだ。

タルジンの剣

 グレート・マザーたちが「影の贈り物」の一環として、魔術で召喚してモーガン・エルズベスに与えたのはタルジンの剣(つるぎ)。

 「スター・ウォーズ:クローン・ウォーズ」シーズン6 第9話「失踪 パート2」で、マザー・タルジンは魔術で剣を出現させ、メイス・ウィンドゥと戦っていた。

 ナイトシスターの魔術特有の緑色の炎をまとった剣で、ライトセーバーでも斬ることが出来ない点は同様であり、「タルジンの剣」と呼ぶくらいなのでこのマザー・タルジンが使用していた剣と同じものだと思われるが、「パート8:ジェダイと魔女と大提督」でのタルジンの剣は、「クローン・ウォーズ」でマザー・タルジンが使用した剣とは柄のデザインが別物と言えるくらい異なっている。

ケイナン・ジャラス

 新たなライトセーバーを作成しているエズラ・ブリッジャーに、誰からライトセーバーの作り方を教わったのかと尋ねたヒュイヤンに対して、サビーヌ・レンはケイナン・ジャラスの名前を出す。

 ケイナン・ジャラスは、宇宙船ゴーストを駆るヘラ・シンドゥーラ、エズラ・ブリッジャー、サビーヌ・レン、ゼブ、チョッパーことC1-10Pらロザルの反乱者たちとともに帝国軍と戦った「スター・ウォーズ 反乱者たち」のメインキャラクター。

 オーダー66を生き延びたジェダイの生き残りであるケイナン・ジャラスは、「パート8:ジェダイと魔女と大提督」でエズラが語るように、エズラの師として様々な教えを授けた。

 ケイナン・ジャラスは帝国の勃興後に名乗っている名前であり、共和国時代の本名はケイレブ・デュームであるが、ヒュイヤンはケイナン・ジャラスと聞いて認識しており、自身のセリフの中でもケイレブと呼んでいる。サビーヌが言ったわけではないようなので、アソーカからケイレブ・デューム=ケイナン・ジャラスであることを聞いたのだろうか。

 ちなみに、ヒュイヤンはエズラに「師匠と弟子の関係は難しくもあるが意義深いものであることが充分理解出来る歳」だと言っているが、書籍「Star Wars: Timelines」によるとヤヴィンの戦いの2万5020年前頃(25020BBY)に造られたとされている。

エズラ・ブリッジャーの3本目のライトセーバー

 エズラはT-6シャトル内でヒュイヤンが持っていたパーツを用い、自身のライトセーバーを組み上げる。最後にセットしたパーツは、ケイレブ・デュームのためにヒュイヤンが持っていた予備のブレードエミッターだ。

 これにより、エズラ・ブリッジャーの3本目のライトセーバーはハンドル部分に鍔のようなガードが付いた、上部は師であるケイナン・ジャラスのライトセーバーを取り入れたデザインとなった。

 「STAR WARS スター・ウォーズ ライトセーバー大図鑑」によると、デイヴ・フィローニは「反乱者たち」の制作にあたっては『スター・ウォーズ』オリジナル・トリロジーのコンセプトアーティストであるラルフ・マクウォーリーが描いたデザインを多く取り入れており、柄にガードが付いたケイナン・ジャラスのライトセーバーもラルフ・マクウォーリーによるライトセーバーのスケッチを元にしている。

マンダロアの大粛清

 ヒュイヤンは、エズラにアソーカ・タノとサビーヌ・レンの過去を語る。銀河内戦の末期に、帝国はマンダロアの地表全体を粛清して膨大な数の犠牲者を出した。

 その中にはサビーヌの家族全員も含まれており、つまり「反乱者たち」に登場した父のアルリック・レン、母のウルサ・レン、兄のトリスタン・レンはこのマンダロアの大粛清で亡くなったというわけだ。

 このマンダロアの大粛清により、アソーカはサビーヌが潜在能力を解放することになれば危険だと感じたのだとヒュイヤンは言う。これはサビーヌの怒りが、ダークサイドの誘惑を受けやすいと判断してのことだろう。

 「パート4:堕ちたジェダイ」では、アソーカがサビーヌのことを信じなかったことにより、サビーヌの家族はマンダロアで死ぬことになったとベイラン・スコールは話しており、サビーヌの家族の死はマンダロアの大粛清に関連するものだとほのめかされていたが、この「パート8:ジェダイと魔女と大提督」での描写によって確定となった。

 マンダロアの大粛清は、「マンダロリアン」ではじめて言及された出来事だ。

 「チャプター7:罰」のクライアントによれば、なぜマンダロアはあれほどまで帝国に抵抗したのかと言うほど、帝国の大粛清に対してマンダロリアンは徹底抗戦したようだ。

 「パート8:ジェダイと魔女と大提督」にて、マンダロアの大粛清は銀河内戦の末期に起きたことが明らかになった。銀河内戦の末期ということで、エンドアの戦いの前後どちらかによっても情勢は異なるが、帝国軍が銀河の中で劣勢となる中であれば、マンダロリアンたちもそこに勝機を見出して徹底抗戦していたのかも知れない。

 ただシーズン3「チャプター23:スパイ」で描かれるように、ボ=カターン・クライズはマンダロアの大粛清に対して最終的には降伏し、モフ・ギデオンら帝国保安局と停戦交渉していた。帝国軍は相手が降伏してもなお、マンダロアを壊滅させたのだ。

 アーマラーも含めた一部のマンダロリアンはマンダロアの衛星コンコーディアにいたほか(「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」第5話「チャプター5:マンダロリアンの帰還」)、マンダロアでも生き残りのマンダロリアンたちがおり、マンダロリアンは大粛清の中でも滅びることはなく、ディン・ジャリンやグローグー、ボ=カターン・クライズらはシーズン3 「チャプター24:帰還」でついにモフ・ギデオン率いる帝国軍の残党を壊滅させて、マンダロアを奪還した。

「マンダロリアン」シーズン3 第8話「チャプター24:帰還」のレビューやトリビアを、ネタバレありで解説します。

 マンダロアの大粛清は、「マンダロリアン」、「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」、「スター・ウォーズ:アソーカ」にて、過去の出来事ではあっても、キャラクターを作り上げる上での重要な経験としてストーリーの根底に位置しており、シリーズをまたがって少しずつ真相が明らかになっている大きな出来事だ。

 新共和国時代のドラマシリーズは、この厄災の余波の中で生きる人々の物語という側面を持っていると言えるだろう。

 デイブ・フィローニ監督による「マンダロリアン」、「ボバ・フェット/The Book of Boba Fett」、「スター・ウォーズ:アソーカ」を締めくくる、帝国の残党と新共和国の間で巻き起こる戦いを描く映画作品でも、多くの人々の運命を左右したマンダロアの大粛清は背景としてあり続けると思われる。

アナキンはいつでも味方してくれた

 アソーカは、サビーヌに対して他の者たちが背を向けたとしても、自分の師であるアナキン・スカイウォーカーはいつでも味方してくれたと言う。

 この代表的な例は、もちろん「クローン・ウォーズ」シーズン5 第17話「爆破犯を追え」からはじまるジェダイ・テンプル爆破事件の容疑者の疑いをかけられたアソーカに対して、アナキンが最後までアソーカを信じて事件の全容解明に尽力したことだろう。

「フォースを信じて」

 アソーカはサビーヌに、ジェダイであることはライトセーバーを使いこなすことではなく、精神と身体を鍛えてフォースを信じるのだと言う。

 この「Trust in the Force(フォースを信じて)」というセリフは、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』にてライラ・アーソもジン・アーソとの別れの際に言っている。

タイ・ディフェンダー

 「パート8:ジェダイと魔女と大提督」のエンドクレジットでは、ケイシー・アダムスがタイ・ディフェンダーのパイロットを演じていると記載されているが、劇中に登場するのはタイ・ファイター(TIE/ln)だ。

 確かに「反乱者たち」では、スローン大提督がタイ・ディフェンダーの開発を推進していたのだが…

スター・デストロイヤーとシオンの目の連結

 スター・デストロイヤー キメラは、別銀河へと航行可能なシオンの目と連結してペリディアを発とうとする。

スター・ウォーズ マイクロ・ギャラクシー アナキン・スカイウォーカーのジェダイ・スターファイター(デルタ7B)(筆者撮影)

 これは『エピソード2/クローンの攻撃』にて、ジェダイ・スターファイターのデルタ7イーサスプライト級がハイパードライブ・リングを用いる際の構図を、そのまま巨大化したかのようだ!

『スター・ウォーズ』「マイクロ・ギャラクシー」シリーズ2、シリーズ3をレビュー!

死者をよみがえらせるナイトシスターの魔術

 グレート・マザーたちによって、倒したはずのナイトトルーパーたちが次々と不自然な動作で再び起き上がる様子を見て、エズラは初めて見ると言うが「クローン・ウォーズ」シーズン4 第19話「魔女狩り」ではナイトシスターの最長老であるオールド・ダカが魔術によって死者を復活させて軍勢を呼び起こしており、ナイトシスターの魔術で死者がよみがえらせることはシリーズで描写されている。

 オールド・ダカによる死者の軍勢は、ダソミアに侵攻してきたグリーヴァス将軍が率いるドロイド軍と戦ったが、オールド・ダカが倒されたことによって魔術の効力が切れてしまった。

LS-757

 エズラはスター・デストロイヤー キメラに乗り込む際に倒したナイトトルーパーは、コムリンクでの通信からLS-757であることがわかる。

 「反乱者たち」シーズン4 第9話「攻撃の時」では、同じく帝国軍での通信にて自身をLS-757と名乗っているストームトルーパーが登場する。ロザルのキャピタル・シティを警護していたLS-757は、反乱軍パイロットでありジュン・サトーの甥であるマート・マティンの陽動に引っ掛かって倒されている。

 おそらくLS-757は、この後にスター・デストロイヤー キメラに乗り込むことになり、パーギルによって別銀河であるペリディアまで飛ばされることになったのだろう。

ローニン(浪人)

 スローン大提督は、アソーカをローニン(浪人)と呼んでこのペリディアにふさわしいのだろうと言う。

 『スター・ウォーズ』においてローニンという言葉は、「スター・ウォーズ:アソーカ」以前にもすでに存在しており、『フォースの覚醒』や小説「ジェダイの剣術を磨け!ルーク・スカイウォーカーの冒険」に登場するサルコ・プランクは、自身の種族・メリットの文化においてローニンとされている。

 巣が大きくなり過ぎて効率的に運営出来なくなった際に、ミルミトリクスと呼ばれるメリットの女性が自身を擁立する戦士たちとともに新たな女王となることを望んで戦いを挑むというメリットの風習があり、この戦いに敗北して巣を追放された戦士がローニンと呼ばれているのだ(書籍「Star Wars: Aliens of the Galaxy」にて設定)。

 また、正史(カノン)ではないが「スター・ウォーズ:ビジョンズ」の「The Duel」ではローニンという名の元シスのキャラクターが登場している。

モライ

 ノティたちとともにペリディアに残ることになったアソーカを遠くから見つめ、飛び立っていくフクロウのような鳥は、コンヴォアのモライだ。

 コンヴォアのモライは、「クローン・ウォーズ」、「反乱者たち」にて登場。モーティスの神々として知られライトサイドの化身であるドーターがサンに殺された後、ドーターと精神的なつながりがあるというコンヴォアのモライがドーターが救ったアソーカを見守る存在となった。

 別銀河であるペリディアにまで姿を見せているあたり、何らかの超常的な力で移動が出来るのだろう。モライは、はざまの世界にも現れるくらいだから…

 モライがペリディアにもいた理由は、もしかするとアソーカとサビーヌがペリディアから帰還する方法のヒントになるかも知れない。

ファーザー、サン、ドーターの像

 ペリディアでベイラン・スコールがたたずんでいたのは、モーティスの神々であるファーザーの巨大な石像の上だった。画面に向かって右側にはサンの石像があり、左側にも石像の胴体らしき構造物が残っている。こちらはドーターの石像で、原因は不明だが頭部が破壊されているようだ。

 フォースの聖域であるモーティスのファーザー、サン、ドーターは、「クローン・ウォーズ」シーズン3 第15話「フォースの惑星」、第16話「光と闇」、第17話「未来の選択」に登場。それぞれ超越したフォースを持ち、ダークサイドの化身のサン、ライトサイドの化身のドーター、そしてバランスを取り持つファーザーが均衡を保っていたが、アナキン・スカイウォーカー、オビ=ワン・ケノービ、アソーカ・タノが迷い込んだことでバランスが崩れてしまう。

 別銀河のペリディアにもモーティスの影響があることは、何を意味するのだろうか。いまだ見えないベイラン・スコールがペリディアで成そうとしていることにも関係があるのか、語られる時を待ちたい。

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