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チーム★アメリカ/ワールド・ポリス

 「チーム★アメリカ/ワールド・ポリス」は、凶悪切り絵アニメ「サウスパーク」の作者トレイ・パーカーとマット・ストーンによる、カクカク人形劇映画。なのにR-18!その理由はすぐにわかると思うが・・・ベースになっているのはサンダーバードのパロディだ。

 国際警察「チーム・アメリカ」はラシュモア山(日光ウェスタン村でもおなじみ、4人の大統領の顔が彫ってある所)にひみつ基地を持ち(出撃時にはワシントン大統領の顔が展開する!)、日夜テロリストと戦っている。
 チーム・アメリカのメンバー5人はサンダーバードのようにヘリ、ジープ、飛行機、潜水艦などの必殺メカを操り、ミサイルをバカみたいに撃ちまくって大量破壊兵器を持っている悪のテロリストを掃討!ムチャクチャな攻撃するもんだから、民間人もエッフェル塔やピラミッドなどの世界の名所もまとめて破壊!チーム・アメリカが来るとペンペン草ひとつ生えないようなロケーションに一変してしまう。


 そんなチーム・アメリカの敵はテロリストだけじゃなかった!リベラル派の俳優組織「F.A.G」(映画俳優協会/オカマ野郎という意味もある)が反対運動を繰り広げ始めたのだ!参加する俳優はアレック・ボールドウィン、スーザン・サランドン、ジョージ・クルーニー、リブ・タイラー、ロビン・ウィリアムス、マット・ディモン(「まっと・でぃもん」としか言えないバカとして描かれる)、ショーン・ペン(本物がこの映画に抗議!)などなど、有名俳優が大挙して登場!マイケル・ムーアも両手にホットドッグを持ちながら参戦!そしてチーム・アメリカひみつ基地に自爆テロを仕掛ける!

 さらにこの「F.A.G」の運動、各地のテロ活動の裏には黒幕が・・・キム・ジョンイルだ!彼は北朝鮮(この映画の中ではモルドール並みの悪の王国として描写)にある宮殿で、911テロの1000倍の規模のテロ「911000」(そのまんまじゃん!)を企んでいた!大量破壊兵器の査察に来た国連査察団の委員長ハンス・ブリックスを007の悪役のようにサメプールに落とす!

 全編を彩る(?)のは下ネタギャグの嵐!酒場でオヤジが、中学生でも言わないような下劣な説教を主人公に説く!吐いたゲロがどこまでも止まらず、一面ゲロの海に!R-18の理由はこれだ!

 かといってバカにできないのが、特撮のクオリティ。パリやニューヨーク、パナマなどの町並みのシーンなんて大量の人形が出てくるのに細かい動きをしているし、ミニチュアの爆発だってCGを使わず火薬で爆破!人形も弾着を仕掛けて着弾すると血が飛び散る(そして有名俳優が皆殺しにされる)!さらに人形に持たせる銃は、実際に火薬で動いて薬莢を排出するミニチュアが作られたというから驚く。古きよき特撮魂がそこにはある。

 全体の構成としては、ハリウッドのバカ大作映画、具体的に言うとジェリー・ブラッカイマー映画のストーリーの運び方をそのまま使い、コケにしている。
 例えば、キメぜりふはオープニングバトルとクライマックスの2回言う、クライマックスのカギとなる要素が中盤で伏線を張ってある(これが先のオヤジの下ネタ説教だからあきれる)、登場人物は心にトラウマを抱えている、敵が弾切れになったら自分も武器を捨て、クンフー対決(人形だからへなちょこクンフー)、三角関係でごたごたになる、などなど。
 マイケル・ベイ&ジェリー・ブラッカイマーの「パールハーバー」に至っては、「今の僕はパールハーバーよりもクソさ~♪」なんて歌にまでされている!

 他にもエジプトの酒場の音楽がカンティーナ・バンドのパチモンだったり(楽器もそのまんま)、突然「新・仁義なき戦い」のテーマが流れ「キル・ビル Vol.1」の完コピしたり、キム・ジョンイルの宮殿に入る時にジェダイ・マインドトリックを使ったりと、映画パロディも随所にある。スター・ウォーズネタが多いのは、作者トレイ・パーカーとマット・ストーンがスター・ウォーズオタクだからだ。

 トレイ・パーカーといえば、自作の音楽も担当している。前作「サウスパーク 無修正映画版」でも素晴らしいミュージカルを繰り広げてくれたが、今回はチーム・アメリカのテーマ曲をはじめ、いい音楽を聞かせてくれる!特に主人公が特訓する場面に流れる「モンタージュ」!
 「モンタージュ、それは時間の経過を意味する/『ロッキー』でもやってた」なんて、映画の編集技法であるモンタージュをそのまんまネタにしてて最高!音楽が80年代風なのがミソだ。他にも「サウスパーク 無修正映画版」のサタンみたいにキム・ジョンイルが孤独を歌うソロ曲もある!

 サントラの試聴はこちら

 反戦を声高に訴えるでもなく、もちろん愛国を叫ぶでもない。テロリストもアメリカも、キム・ジョンイルもハリウッド反戦俳優も、低脳ハリウッド映画も、何もかもをバカにした小学生のようなメンタリティを持つ映画。人形の声のほとんどは、トレイとマットの2人だけで一人何役も演じている。学生時代とまったく変わらない事をしているんだから、まったくもってバカ(誉め言葉)だ!

 ちなみにこの映画、パンフレットが作れなかったようなのでこの本が劇場で売っていた。

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