『I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー』レビュー 今こそ見るべき、デヴィッド・プラウズの「帰還」を描いたドキュメンタリー

I AM YOUR FATHER / アイ・アム・ユア・ファーザー(字幕版)

 『スター・ウォーズ』オリジナル・トリロジーでダース・ベイダーを演じたデヴィッド・プラウズが、現地時間11月28日(土) に85歳で亡くなりました。

 The Sunに掲載されたデヴィッド・プラウズの娘であるレイチェル・プラウズの話によると、デヴィッド・プラウズは以前よりアルツハイマーを患っており、新型コロナウイルス(Covid-19)による合併症により亡くなったとのことです。

 新型コロナウイルス感染防止の制限により、入院中の面会や最期のお別れをすることが出来なかったそうで、その葬儀も望んだ通りのものが出来なさそうだとしています。

 ただ、病院の看護師はデヴィッド・プラウズのことをなんてかっこいい男だと言っていたということで、レイチェル・プラウズは、デヴィッド・プラウズがTwitterでトレンドになっているのを本人も見たかったでしょうとも発言しています。

 ダース・ベイダーというキャラクターは、様々な俳優がパートを分けて演じ、形作られましたが、その代表的な存在がデヴィッド・プラウズでした。

 ボディビルダーや重量挙げで鍛えた大柄な体格により、ダース・ベイダーの威圧と存在感を発し、ヘルメットで表情がわからない中でもその所作により、ダース・ベイダーの怒り、そして息子であるルーク・スカイウォーカーに対する葛藤など様々な感情を表し、映画史上に残る悪役をデヴィッド・プラウズはスクリーンに残してくれました。

 そんなデヴィッド・プラウズを悼む際に、『スター・ウォーズ』オリジナル・トリロジーとともに見て頂きたい作品が、デヴィッド・プラウズを題材にしたドキュメンタリー映画『I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー』。

 ここでは、デヴィッド・プラウズへの追悼の思いと、またデヴィッド・プラウズのファンに本作を見て頂いてご本人のことをもっと知って頂きたいという思いを込め、『I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー』をレビューさせて頂きたいと思います。

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『スター・ウォーズ』 キャスト/スタッフからの追悼メッセージ

 まずは、デヴィッド・プラウズの訃報に際してSNS上で発せられた『スター・ウォーズ』キャスト/スタッフからの追悼メッセージをご紹介します。

 ジョージ・ルーカスは、『スター・ウォーズ』公式サイトにてデイビッド・プラウズの身体とパフォーマンスによって、ダース・ベイダーが脚本やコンセプトアートといった紙からスクリーンに存在するようになったと、その貢献を讃えるコメントを出しています。

 『スター・ウォーズ』キャストたちも、SNSでデヴィッド・プラウズの死を悼んでいます。

 ルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミルは、ダース・ベイダー役だけではなく重量挙げのチャンピオンであり、交通安全キャラクターのグリーン・クロス・コード・ マンを演じたこと、大英帝国勲章を授与されていることに触れ悼んでいます。

 C-3PO役のアンソニー・ダニエルズは、ダース・ベイダーとC-3POは『帝国の逆襲』でチューバッカの背に背負われているシーン以外には同じ場にいなかったことに触れながら、デイビッド・プラウズが演じたダース・ベイダーは今後も不滅であることを伝えています。

 ランド・カルリジアン役で、40年前に公開された『帝国の逆襲』で共演したビリー・ディー・ウィリアムズは、共演できたことは素晴らしい贈り物であったとし、友人と呼べることを光栄に思うとしています。

 ウィケットを演じたワーウィック・デイビスは、ダース・ベイダーのポスターにサインをもらったことを明かし、自分が11歳の頃からの真のヒーローだと讃えます

 『エピソード2/クローンの攻撃』でボバ・フェットを演じたダニエル・ローガン。『スター・ウォーズ』での共演はありませんが、ともに多くのコンベンションに参加しており、その仲の良さが伺えます。

『I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー』レビュー

I AM YOUR FATHER / アイ・アム・ユア・ファーザー(字幕版)

 『スター・ウォーズ』になくてはならないダース・ベイダーというキャラクターを演じたデヴィッド・プラウズ。

 しかし、デヴィッド・プラウズは台本を覚えて撮影現場で演じたダース・ベイダーのセリフのすべてをジェームズ・アール・ジョーンズの声に吹き替えられ、ライトセーバーの殺陣のスタントはボブ・アンダーソンが担当し、『ジェダイの帰還』のクライマックスでついにダース・ベイダーが息子ルークに救われ、アナキン・スカイウォーカーへと帰還するシーンではセバスチャン・ショウが素顔を演じることになりました。

 結局、デヴィッド・プラウズは映画史に残る悪役を演じても、その顔をスクリーンに映し出すことはなかったのです。

 『I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー』は、デヴィッド・プラウズに『スター・ウォーズ』製作時について振り返るインタビューで構成されたドキュメンタリーではありません。

 本作の主人公とも言えるのは、本作の監督であり『スター・ウォーズ』とダース・ベイダー、そしてデヴィッド・プラウズの熱烈なファンであるスペイン人の映画製作者、マルコス・カボタ。

 マルコス・カボタは、『I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー』で、デヴィッド・プラウズとルーカスフィルムの関係がこじれた原因を、デヴィッド・プラウズ本人はもちろんのこと、ゲイリー・カーツ、ロバート・ワッツといった『スター・ウォーズ』のプロデューサーへのインタビューなどの取材によって探っていきます。

 その声に重厚感がなく、イギリス西南地方の訛りも強かったため(キャリー・フィッシャーが「ダース・ファーマー(農夫)」とあだ名を付けたことは、Disney+ (ディズニープラス)で配信中の「夢の帝国 スター・ウォーズ・トリロジーの歴史」で本人が明かしている)、声はジェームズ・アール・ジョーンズが務めたというそもそもの不満があったものの、1977年の『スター・ウォーズ』の大成功によりメディアへの露出も増えたデヴィッド・プラウズ。

Disney+ (ディズニープラス)

 そんな第1作目公開直後の1978年のインタビューにて、デヴィッド・プラウズは『スター・ウォーズ』の次回作の可能性のあるあらすじとして、ルークとダース・ベイダーがライトセーバーで決闘し、ダース・ベイダーがルークの生き別れの父だった、と話したのです。

 あまりにも『帝国の逆襲』のクライマックスシーンのままで驚く!デヴィッド・プラウズは、『帝国の逆襲』のあらすじを知っていたのか?または、ルークの父がダース・ベイダーであると発案したのはデヴィッド・プラウズだったのか?

 その真相は『I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー』をご覧頂くとして(一応、『帝国の逆襲』の撮影時にあのセリフを知っていたのは、ジョージ・ルーカス、アーヴィン・カーシュナー監督、マーク・ハミルの3人だけだったという逸話があることは付記しておく)、製作サイドとしては続編の準備中にそのストーリーをメディアに話すことは避けて欲しいところ。

 これにより、デヴィッド・プラウズはメディアに話してしまいやすいという認識が製作側に付き、『帝国の逆襲』の撮影時にあのセリフが伝えられることはなく、ダース・ベイダーがルークに父親であることを告げるシーンをデヴィッド・プラウズは映画館で初めて見ることに。

 続く『ジェダイの帰還』で、デヴィッド・プラウズと製作側の溝は決定的なものになります。デヴィッド・プラウズの音声手記によると、現場はリチャード・マーカンド監督が無視をしてくるという異様な状況の中で、スタントはボブ・アンダーソンが担当。

 そして、ライトサイドに帰還した素顔のアナキン・スカイウォーカーを自身ではなく、セバスチャン・ショウが演じることを配役表で見てしまいます。

 声ばかりか、物語のクライマックスシーンで顔を出して演技をすることも出来ず、ヘルメットの中のまま終わってしまった。

 『ジェダイの帰還』の公開前には、デイリー・メール紙のデヴィッド・プラウズの独占インタビュー記事にて、ダース・ベイダーが死ぬと報じられ、ジョージ・ルーカスは当然ながら激怒。重要人物の死についてのネタバレは、製作側にもファンにとっても良くないことでしょう。

 オリジナル・トリロジーを通して、デヴィッド・プラウズとルーカスフィルムの関係は険悪なものになりました。

 さらに『I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー』では描かれていませんが、ほかにもデヴィッド・プラウズは権利者であるルーカスフィルムの許可を得ずにサインを売るなどの商売をしており、またギャラについてもかねてから不満があるなど、お互いに不信を募らせてしまう悪循環が続いていたのです。

スター・ウォーズ セレブレーション ジャパン デビッド・ブラウズ

 2010年には、デヴィッド・プラウズが『スター・ウォーズ』オフィシャルイベントへの出入り禁止を明かしています。2008年の「スター・ウォーズ セレブレーション・ジャパン」では来日しているので、これ以降に関係が断たれたものと思われます。

セレブレーション・ジャパン リポートその16 VIPパーティー
「スター・ウォーズ・セレブレーション・ジャパン」2日目の7月20日(日)に開催された、ヨーダ・プレミアムチケットの特典「VIPパーティー」の模様をリポート。

 こうした前提がある中で、本作の監督のマルコス・カボタはデヴィッド・プラウズに対してある提案を行います。それは、『ジェダイの帰還』でダース・ベイダーがライトサイドに帰還してアナキン・スカイウォーカーとなり、そのヘルメットを外すシーンを、今のデヴィッド・プラウズに演じてもらい撮影するというもの!

 デヴィッド・プラウズの大ファンであるマルコス・カボタは、これでデヴィッド・プラウズの長年の無念を晴らそうというのです!失った栄光を、デヴィッド・プラウズに取り戻そうというマルコス・カボタの提案に、デヴィッド・プラウズはどう応えるのか。

 この前代未聞のデヴィッド・プラウズによるアナキン・スカイウォーカーへの帰還シーンの再撮影の行方が、本作の大きな見どころです。

 何といっても、マルコス・カボタ監督のこの行動力には敬服します。映画に出演した俳優でファンムービーを撮るとは通常考えられないことですし、ルーカスフィルムとの長年の確執が伝えられている中に飛び込んでいくという、自身も作中で言っているようにクレイジーな企画でしょう。

 しかし、そこにはファンだからこその強い思いと、デヴィッド・プラウズに自分が出来るだけのことをしてあげたいという愛を感じられます(人によってはありがた迷惑になるかも知れませんが)。

 『I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー』撮影時、デヴィッド・プラウズの声は『スター・ウォーズ』撮影時よりも低くなっており、ジェームズ・アール・ジョーンズに近いものになっていました。しかし、当時ですでに高齢の身。再びダース・ベイダーのスーツを着ることが出来るのか…

 一方、マルコス・カボタ監督はスペインで特殊造形アーティストなど、『ジェダイの帰還』でのアナキン・スカイウォーカーの帰還シーンを撮影する準備も整えていきます。

 これに加えて、前述したデヴィッド・プラウズとルーカスフィルムとの確執について、「ダース・ベイダーとルークの親子関係 ネタバレ事件」、「ダース・ベイダーの死 ネタバレ事件」、「デヴィッド・プラウズ 公式イベント出禁」という関係を悪化させたそれぞれの出来事について、デヴィッド・プラウズ本人の発言、家族、知人の証言、ゲイリー・カーツ、ロバート・ワッツといった『スター・ウォーズ』のプロデューサー、またダース・ベイダーの死を報じたデイリー・メール紙の記者への取材を行い、それぞれの視点からの主張を紹介し、真相に迫ろうとします。

 両者の主張を聞くことで公平性を感じられますし、ことの真相を紐解く丁寧さが感じられます。

 それぞれの主張は頷けるところがあり、確かに製作側から見ればデヴィッド・プラウズの当時の声はダース・ベイダーを表現しにくく、アナキン・スカイウォーカーの設定年齢とは合わず、アナキン役は別に俳優を立てるのが良いでしょうし、デヴィッド・プラウズ側からすれば現場での扱いなどで色々と思うところはあったのでしょう。

 お互いが不信感を募らせる悪循環が続いた結果、周囲も含めて腫れ物に触るようになり、関係が破綻してしまったのではないでしょうか。

 そして、今やイベントなど『スター・ウォーズ』の関連事業には関係のないジョージ・ルーカスの名前が持ち出されて、対立関係が周囲により作り出された状況もあります。

 しかし、マルコス・カボタ監督はこの作品でいくつかの誤解を解くことが出来、それはデヴィッド・プラウズにとって、また彼の家族や世界中のファンにとって「救済」となったのではないでしょうか。

 ドキュメンタリー映画は、よく現実そのものを写し出した作品だと思われがちですが、実際にはカメラとそれを持つ製作者が被写体の側にいることによって、ありのままの自然な現実ではなく、被写体そのものに関与したり、カメラによって現実を変えてしまいます。

 監督の強い行動力により、デヴィッド・プラウズに『ジェダイの帰還』のリベンジを提案し、ある結果を残した『I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー』も同様です。

 『I AM YOUR FATHER アイ・アム・ユア・ファーザー』の撮影を終えて、デヴィッド・プラウズが実際のところ、どう思ったのかは本人にしかわかりません。ただ、この作品は『スター・ウォーズ』、そしてダース・ベイダーが大きな部分を占めたデヴィッド・プラウズの人生を、より深く理解出来るものとなっています。

 家族や知人がデヴィッド・プラウズについて語る様子は、彼の人生を振り返る今見るとより感慨深く感じられます。

 本作で描かれた「帰還」により、デヴィッド・プラウズにとっての長年の宿命の輪が閉じたことを願い、そして魅力的なキャラクターを形作った、数々のマスクの下の俳優に敬意を払いたいと思います。

ダース・ベイダー デヴィッド・プラウズ サイン

 最後に今こそ、この言葉を。

 No one is ever really gone.
 (誰ひとり消え去っていない)


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